第6話 雨に佇む
暖かい教室から廊下に出た。窓のところにうっすら氷が見えた。雨が降ってると思っていたけど、雪が混じってたんだ。
理科室へと通じてる渡り廊下から、何人かのはしゃぐ声。それはだんだんと遠くなっていった。
さっきまで人がいた所。手のひらほどの雪が残っていた。指でちょんと触れた。冷たい。
「お〜! 雪? 降ってたんだ。めちゃくちゃ寒いわけだ」
「へぇ〜」
「なになに? あ、雪?」
先輩と、あとの二人は友達なのかな。教科書に筆記用具が小脇に抱えてあった。
「部活の後輩?」
「後輩。文化祭で初めて話してから、ちょくちょく絡んでる」
話して……いつも先輩から話しをしてもらって、私からは無い。
「付き合ってる?」
その言葉に、どくん、と脈打つ。先輩は素敵な人だ。尊敬する。憧れる。でもそれ以上は願ってはいけないような気がして。
「困る聞き方してくんなよ。友達だって」
困る聞き方……、困らせてしまう。私みたいな話し下手は、相手を困らせちゃうよね。自覚はあったでしょ。
チャイムが鳴る。救いの音に思えた。
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