第7話 涙の理由

 先輩から聞いていた動画を再生する。柔らかな音色。軽やかな指運び。

 ベース、手の動き、全身で取るリズム。ちらっと顔が映ってもマスクをしてあって、ほとんど分からない。でもそれが逆にカッコ良さを際立たせる。見る人が想像するから。洗練された無駄の無い演奏と、動画の終わりに時々見せるお茶目なピースサインは見る人を虜にさせているようでコメントにも、それについて書かれた内容があった。


 ほとんど初期設定のSNSは、なんでも素直に受け取って知らせてくる。先輩はコメントを付けてくれて、私はそれを少し緊張しながら返事をする。


 いつも先輩から話しかけてくれて、私は頷くので精一杯で、でもそれがすごく楽しいんだと思い始めていて。

 涙で滲んでいく視界。あふれ出した感情は収まらなくて、ぼろぼろと流れてく。

 誰か一人に、こんなにも想うなんて。好き。知ってる言葉がこんなにも複雑なんて、初めて知った。

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