さんかのはなし2

第13話

「あ、壬黎さん!…と律さん」




「おいおい、俺はついでかよ」




「どっちかといえばついではあたしなんだけどね」






俺達には見せないような安心しきったガキみたいな顔をするリーダー。このチームはこの人達が助けたようなもんだった…らしい。






さ ん か の は な し 2






「そうだ、新人入ったんですよ」




「らしいね。律が見に行こうって言うから来たんだけど」




「壬黎だって乗り気だったじゃん?」




「まァね」






まだ壬黎さんが夜行隊長だった時に助けられたとリーダーが前に言っていたのを思い出したけど…まさか女の人だとは思わなかった。喧嘩できんのかな、この人。




作り物のような綺麗な顔の持ち主達のグレーと琥珀がこっちを向いて、一瞬どきりとした。




あれが新人?そうです。ほら、こっち来て挨拶しろよ。リーダーに手招きをされ恐る恐る近付けばその2人は顔を見合わせて肩をすくめていた。俺、なんかしたっけ。






「よろしくお願いします!」




「そんなにおっかなびっくり来なくても何もしねェよ。白夜じゃねェし」




「ああ…白夜さんは威圧感凄いっすよね…」






その白夜さんすら顔を見たこともないけど、この2人より怖いらしい。どんな人なんだろう。




白夜はねェ…メカオタクだよ。あと怒らせるとブスって言ってくんの。マジで性格悪いから。まるで俺の考えてることを読み取ったかのようにそう言われて2つの意味で顔が引き攣った。




そんな性格悪い人とよく一緒にいられるな…この人達。




引き攣った顔のまま3人の動向を見ていればリーダーと律さんは話しながら出入り口を潜って…どっかに行ってしまった。おい、嘘だろ?






「ここには慣れた?」




「…え!?あ、はい!」




「そんな慌てなくても取って食ったりしないんだけど」




「…すいません」






ジッとこっちを見るグレーの目と目があって、やっぱり少し居心地が悪い。なんつーか…観察されてる気分。




もっと強い男かと思った。本当に喧嘩出来んの?…なんて思ってるでしょ。急にそう言われて背筋に冷たいものが走る。




見事に思った事を言い当てられてる。何だ、この人。






「何だこいつって思った?」




「…っ、」




「君が分かりやすいんだよ」






俺が思ってた事はあまり気にしてないのか小さく面白そうに笑う目の前の女の子は、確かに紅龍という恐ろしく強いチームのリーダーなのかもしれない。




隙が一切ないし、何より一瞬見せた高圧的な雰囲気がそれを物語っていた。




そんな初対面から数日後。突然来た敵チームに劣勢を強いられていた時に颯爽と現れて、あっという間に片付けてしまった壬黎さんと見た事ない人に夢を見た。




俺も、こうなれんのかな。




そう思ってはや2年は経つけど…いつまで経っても追いつける気はしない。







((楽しそうに笑う、恐ろしく綺麗な顔))



((この日から、俺の憧れになった彼女))



(うわあ、壬黎さん!?)



(…2年経っても相変わらず分かりやすいね、君)

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