くりゅうのあうん
第11話
あんなにいっつも一緒にいる2人が今日は同じ空間にいるのにバラバラなんて珍しい。
様子も少しおかしい。特に壬黎さん。
く り ゅ う の あ う ん
「怪しいっすね」
「名探偵ノエルちゃん?」
ふざけてる場合じゃねェって。迷探偵の間違いじゃない?なんて笑う壬黎さんにちょっとだけ殺意が湧いた。
明らかにあんた白夜さんの事避けてんだろ。他の人から見ればわからないだろうけど。
今度は何の喧嘩ですかなんて面白半分で聞こうとしたら、上手いこと躱された挙句夢馬さんに邪魔された。
「…で、何があったんだよ」
「その壬黎に聞こうとしてダメだったから俺に聞くのやめろ」
「ハア?別にいいだろ。どうせあんたが何かしたんだろうし」
「つーか相談乗って自分の立ち位置確約すんのもやめろ」
「嫉妬?マジうける。壬黎さんの事困らせるからだろ」
「てめェ本当あいつの前だと猫被るよな。クソみてェな性格のくせに」
クソみたいな性格はもう既にあの人も知ってっけど。それでもあの人の前では善人で居たい。
あいつ絡むとマジお前面倒臭ェ。そう言われて思わず笑う。そりゃな、あの人は俺の1番だから。
でかい先輩と何かを話しながら講義を行っている会長をぼんやりと見ている壬黎さんを眺める。
「俺にとってはチャンスだからいいんだけどさァ」
「デカブツ殺す」
「あんたが今行っても困らせるだけだろ」
「おいコラ聖夜離せ」
「ははは、じゃあ落ち着けよクソゴリラ」
お前その俺敬ってんのか敬ってねェのか分かんねェ態度やめろなんて言われる。
さっきから凄ェやめろって言われんな。敬ってねえわけじゃねェけど。
「とりあえず押せ押せすぎんのも考えた方がいいんじゃねェの。壬黎さん困ってんだろ」
「あいつがでもとかだってとか言うからだろうが」
そんな怒られた人の言い訳みたいな事するほどの事やらかしたのかあの人。
超気になる。何したんだよマジで。
「何で自分なんかがいいのかって聞かれたからキレた」
「あー…自己肯定感低いからな、あの人」
「ムカついたから好きだって言ってやった」
「ブフゥッ!」
「汚ねェ」
つーかあんた今の今までちゃんと言葉にしてなかったのかよ。ドン引きだわ。
普通言わなくてもわかんだろなんてため息混じりで言われて更に引いた。阿吽でもさすがにそこまでは分からねェだろ。
「仮にだ。いくら言わなくても分かっても…そういうんは独占欲剥き出しにする前にちゃんと言葉にするもんだろ…」
「ハ?」
「女心わかってねェなァ。だからあんた初見で寄ってこられて相手したはいいけど泣く女多い…ってェな!」
「余計なこと言ってんじゃねェよ」
ガンガンガン!3発くらいもろに殴られた。ふざけんな。てめェどんだけ力強ェか考えろよ。
つーか余計なことってどの部分だよ。どの部分も誰が聞いてもまじクズだけどな。
じゃあねー!なんて悠長に手を振り立ち去っていく3年3人を眺めていれば、ばちりと壬黎さんと目が合う。
「うっわ珍しく不自然に逃げた」
「あいつ…っ!」
「ちょ、どこ行くんだよ?」
「関係ねェだろ。ついてくんな」
「だって面白そうじゃん」
見せもんじゃねェ。顔面をぐいぐいと押される。この人俺の事ことなんだと思ってんだよ。
さっさと走って教室を飛び出ていく白夜さんを半目で見送れば、一部始終を見ていたメンバーに指さされて笑われた。
「あのまま手出さなきゃいいな?白夜さん」
「さすがに合意なきゃしねェだろ」
「いや、わかんねェよ?暴走すんじゃん。たまに」
「…なんか凄ェ心配になってきた」
お前も大概過保護だよな。そう言われたけど過保護じゃねェと思うけど。
行けば?なんて後押しをされて白夜さんの後を追う。どうせ行く場所なんて学校では教室以外に音楽室しかねェし、そこだろ。
少し慌てて駆けつけてみれば、驚くほどいつもどおりな2人を見て心配した自分が馬鹿みてェだった。
((心配する必要もこの2人にはなかったんだろうけど))
((さすがに合意ねェのにそれは不味くね?))
(音楽室ってムード的にどうなんすか?)
(何もしてないししようともしてない)
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