びば!おきなわ!

第9話

どうせまた遅刻ギリギリに来んだろ、あの人達。




そう思ってた俺が馬鹿だった。マジの大馬鹿だった!






び ば ! お き な わ !







「聖夜、壬黎と白夜どうしたんですか?」




「どうせギリギリに来ますよあの人達。夢馬さん知ってます?白夜さん夏休み中に壬黎さんの家の隣に引っ越したんすよ」




「…ハ?」






やっべ、地雷踏んだ。後ろでやらかしー!なんてメンバーの声が聞こえてくる。




この人も壬黎さんの事好きだからなァ。面倒臭ェ。




言うつもりはねェんだろうけど。白夜さん押せ押せだし、なにより俺ら紅龍は白夜さん推しだし。






「それはこの際どうでもいいです。搭乗時間に間に合えばいいんですけど」




「何?あいつら来てねェの?」




「うける!忘れてんじゃね?」




「何もうけないですしお前らは大人しくしててください。他の人達に迷惑です」






ぴしゃり!未蘭さんと有斗さんに言い放つ夢馬さん。機嫌悪ィな。




少し離れたところで手荷物検査に引っかかっている海音さんと亜久里さんの姿を見つけて余計に青筋が目立った気がした。




あの人達、一体何持ち込もうとしてたんだ。想像は付くけど止められる程の量なのか?







「ほらお前らダラダラしてねェで移動しろ移動!」




「永谷先生、うちのクラスの奴等にも言ってください…」




「え?しょうがねェな…」







ぼそりと聞こえた面倒臭ェという呟きは聞かなかったふりした方がいいか。




2-Cの奴等が座っている方へ向かう永谷さんの後ろ姿を眺めていれば、食う?なんて差し出される国民的なおやつ。サラダ味のそれ。






「お前今から食ってどうすんだよ」




「ん?大丈夫じゃね?」




「知らねェよ」






そう言いながらメンバーから数本受け取り食べていれば目敏くスイーツモンスターさん達に目を付けられた。




寄越せと言わんばかりに手を差し出されている。この人達甘いもん以外も食うのか。




つーか荷物検査大丈夫だったのか?後ろで夢馬さん凄ェ疲れた顔してっけど。






「お前ら悠長に食ってないで移動しような?」




「大雅さん、壬黎さん達まだ来てないんすよ」




「マジか…そういえばあっちでも天宮と誰かが来てねェって言ってたな」




「どこもかしこも遅刻してくる奴ばっかっすね」






そういうイメージ天宮にはねェけど。どっちかといえばしっかりしてそう。




まあまだ時間はあるしそのうち来るだろと大雅さんと頷き合い、飛行機に乗り込む。




指定された座席の隣は絶好調に機嫌が悪い夢馬さんだった。地獄かここは。






「沖縄ついたらどこ行くんすかねェ」




「有名どころ回るんじゃないですか?色々あるでしょう」




「そんな所より海で遊ぶ気満々な前の人達どうにかした方いいっすよ?」




「…飛行機ぐらい静かにして下さいね」






なんでこの3人朝から元気なのかわかんねェな。俺は眠ィ。




昨日も変わらず深夜まで見回りをしていたから眠くてしょうがない。




着いたら起こすぜなんて通路を挟んで隣のメンバーに言われ少し頷き、襲ってくる眠気に身を委ねた。






「沖縄ー!」




「すげー!あちー!」




「意外と俺ら以外の修学旅行生多いな!」






寝起きにこのテンションはきついって。半目になりながら目の前で騒ぐ玲苑さん達を眺めていれば気付く。




嘘だろ?いねェじゃん。何やってんだあの人達。




よし、全員いるな?そんな永谷さんの声にストップをかけたい。ていうかむしろ夢馬さんがかけてた。






「壬黎と白夜どこ行ったんですか?」




「え?あいつら来ねェよ?」




「…ハア!?」






慌ててスマホを取り出し電話をかければ悠長に電話口からはいつも通りはい壬黎なんて声が聞こえる。




そして次の瞬間飛び出てきた台詞は。






「…京都!?」




「ハ?あいつら京都いんの?」




『馬鹿の面倒見るのはまっぴらだから』






思わずハンズフリーにして近くのリーダー達に聞かせれば3人は爆笑し、和叉さんは顔を手で覆い、大雅さんは苦笑いしていた。




問題は青筋を浮かべている夢馬さんだ。この人今日キレてしかねェよ。






「…だそうです」




「何を悠長に…そういうのは普通言うでしょう」




「あの人ら普通の概念無視して生きてますし…しょうがないっすよ」






京都って何あるっけ?知らね。こんな状況に慣れた俺らはそんなことを言い合いながら目の前で当て付けのように夢馬さんに怒鳴られている未蘭さんを眺める。




つーかなんでわざわざ京都行ってんだあの人達。覇王の本拠地じゃねェか。




俺らに言わないで行ってんだからまた厄介な事に首でも突っ込んでんだろうな。






「聖夜めっちゃ面白くなさそうな顔してんじゃん」




「面白くねェよ。壬黎さん何も言わねェし」




「お前本当壬黎さん好きだよなー」




「悪ィかよ」




「白夜さんに殺されんよ?」




「俺のはそういうんじゃねェ」






あの人への想いはそんなもんじゃねェ。つーかそんなもんより重いんじゃね。




2年前人に絶望してたあの時に拾ってくれたあの人に一生尽くしたいって思う。




冗談じゃなく、本気で。手にでも足にでもなれる。あの人の為なら。






「…でもさすがにこの状況を頼むって言われても俺には無理だわ」




「まだ紅龍の方がマシだよな。あの人達クセ強ェし」




「それな」






まだ双子さんとか舜さんが可愛く見える。




問答無用でバスに押し込められる問題児達を見て苦笑いが出た。2泊3日乗り切れんのかな。






((当て付けにその辺の女との写真を送ってやろうと思ったのに))



(…ハア!?なんっで天宮写ってんだよ!?)



(…何て言いました?今)



(あー…いや、何でもないっす。マジで)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る