きになるあのこは

第8話

文化祭の手伝い要員と紹介され、ひょこりと教室に顔を覗かせた人影。




そういえば体育祭ん時もいたな、こんな子。






き に な る あ の こ は






「…凄ェ勢いで連れてかれたけどマジで接客やらせんの?了承もしてなかったけど」




「…なんだかんだやってくれると思うよ。高瀬さん」




「…高瀬、ねェ」






聞き覚えのある苗字に少し思案する。まさかなァ、あんな子が関係者なわけないだろうし。




ていうかこんなとこでゆっくりしてていいの?なんて会長に言われる。




実行委員なんて少し面倒な役割に任命されたけど実際やる事は特にないし。






「いーのいーの。何かあれば言われるっしょ。実行委員の中心も2年だし」




「俺らは最後のイベントだしなァ」




「おーい、そこの2人暇そうにしてんなら手伝え!」






頭数に入ってないからってサボんなよ!目敏くそう言われて少し苦笑いが出る。サボってるわけじゃねェよ?ちょっと雑談してただけ。




へーへーと適当に返事をすれば物凄い勢いでペンキの空き缶が飛んできた。危ねェなァ。






「つ、疲れた…」




「お疲れ」






数十分後、何故か少しボロボロになった高瀬ちゃんが帰ってきた。なんかみんなみーちゃんって呼んでるから俺も便乗しようっと。




鹿の剥製という会長の台詞にドン引きしてるその様子を眺めていれば、目に入ってくるいつもみーちゃんと一緒にいる奴ら。




なんだっけ?なんかのチームらしいけど縁がなさすぎてよく分かんねェ。






「頭に顎乗せないで」




「丁度いい位置にあるからさァ」




「貶してる」






黙っていると少し近寄り難い雰囲気のみーちゃんは、しゃべってみれば結構面白い。




思わずダル絡みをしていれば急に体に衝撃が走る。すっげェ痛ェんだけど。






「また!?」




「会長これ何回もくらってんの?マジやばくね?」






さっきまで普通に喋っていたみーちゃんはいつの間にかやってきた2人組に絡まれている。




呆れた顔をしながらも気を許しているのがすごく良くわかる。…なんか、ちょっと面白くねェなァ。






「おやおや?阿久津くんちょっと不機嫌?」




「んー?そんな事ねェよ?」




「可愛いもんねえ、みーちゃん」




「だーかーらー、違ェって」






どっからわいて出てきたのか女子2人に絡まれる。こいつらちょーっと面倒臭ェんだよなァ。




はいはい、片付けしろよー。適当にやり過ごしながら窓の外を見れば3人の後ろ姿が見えた。






『牙龍学園文化祭、スタートです!』






そんな放送が流れて文化祭が始まる。特徴的な赤茶色の髪は何処に行ったのか黒い髪のカツラを被っているみーちゃん。




凄い暑いとバックヤードで会長にぼやいてるのが聞こえて思わず頭に顎を乗せてやれば少し見上げられ、ぐっ!と息が詰まる。




あァ、こりゃだめだ。




どこにいるのか目で追ってしまっている自分にそのとき気付く。柄じゃねェんだけどなァ、こういうの。




昼休憩を被らせ特設ステージに行きたいというみーちゃんを連れて行けば、ステージ上ではあの2人の姿。




あァ、あいつら見るためにこの時間に休憩してんのかなんて分かりまた少し面白くない。






「ちょっと休憩してきていい?」




「じゃあ先戻ってるわ」






2日目。その時に少し勘づいた。特技と言われた物のラインナップと終わった後の見たことのない冷たい顔。




この子はどんだけのもん背負ってあの業界にいるんだろうか。






「俺と付き合って」




「…ごめん、無理」






そっち側、こっち側。ぼかしながら言われて少しもどかしくなる。




俺がみーちゃんのいうこっち側ならいいのかとかそういう考えが浮かんでは消えて浮かんでは消えて。




多分、みーちゃんは俺が同じ側でも選ばねェんだろうなァ。悔しいけれど。






(え…?)



(バレー部先輩って呼ばれてんのは分かった)



((まずは名前を呼んでもらえるように))



((地道に爪痕残してやろうかなァ))

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る