第2話 クリスマスイブに

かなは、今日、この日がくるのがこわかった。おかあさまとおとうさまが、クリスマスのプレゼントに、しんせきのひとにすすめられたのか、人形をかうと、つよくいっているからだ。かなが、こわいからいらないといってもきいてくれない。かなは、あたらしいかぞくがふえることがこわかった。きょうから、もっとしんけいをつかってくらさないといけない。まるで、たにんをうちにまねきいれるようで、かなはとてもきもちがくらかった。人形がうちにきたら、いったいなにをするかわからないということが、おかあさまもおとうさまも、そうぞうがつかないのだ。あたらしいかんけいが、はっせいする。もしかすると、いえ、きっとかならずおそろしいことになる。おとなというものは、いつどこでここまでものごとがわからなくなるのだろう。

 

デパートにいた人形たちは、みんな、なにがあったのかおそろしいかおをしたままかたまっている。どうして、そんなにめがあおいの?そんなにまばたきもできないくらい、なにかがにくいの?きんぱつで、めがあおいなんて、かなはがいこくごがわからないから、なかよくなれるじしんがまったくない。ああ。どの子だったら、かなはそれでもはなせるだろう?

できるだけ、にほんじんがいい。でも、あんなにきょくたんにかおがまっしろのくろかみでなくてもいい。

「あれ?この子は……」

その子は、ちゃいろのかみに、くろっぽい目をしていて、のぞきこむとすこしはなしができそうなかおにみえた。くろのめいどさんのようなおようふくが、その子ににあっていなかった。この子は、もっとあかるい色のふくがにあうのに。たとえば、ピンクのはなのもようのワンピースとか。

その子のおなかに耳をくっつけてみると、すこしこえがきこえたきがした。

「たすけて」

そのこえは、とてもれいせいできれいな声をしていた。

かなは、なにかおおきなうんめいをにぎったようなかんじにみぶるいがして、あせばむ手をにぎりしめた。

かなは、おかあさまに

「この子にする」

と、右手でゆびをさした。

いえにかえり、その子をみつめてなまえをかんがえた。このまだ六年のみじかいじんせいで、だれかのなまえをつけることは、かなにとって、とてもむずかしいことだった。

その日はそとがさむかった。

ああ。この子はきっとこれから先、このいえからでられないのだな、とおもうとくるしくなった。そうおもっていると、ふと目のまえにひらひらとやわらかいゆきがまうようにみえた。

その日から、その子のなまえは、「ユキちゃん」となった。

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