第4話:海に放たれた750本のガラス瓶の51本目が37年後に戻ってくる ― ボトルメールのロマンは宇宙船ボイジャーにも似て

 これまでのエピソードでは外国の話が続いたが、今回は日本のお話。


 1984年と翌年に銚子沖から750本ものボトルが海に流された。現代の良識では、公害である。環境汚染である。でも、あの時代、そんな非難を浴びることもなかった。中に四か国語で書かれた手紙をしたためたボトルメールなのだから、ロマンが先に立つ。ただし、ボトルの放流を計画・実行したのは、千葉県立銚子高校の自然科学クラブの学生たちだった。いや、あの時代、科学だってロマンに駆動されていたのかもしれない。


 本件を伝える読売新聞の記事は、次のように述べている。


「ハワイ島東部プナの海岸で6月20日、アビー・グラハムさんが牛乳瓶ほどの大きさの瓶を見つけた。ふたはさび、泥だらけで異臭もする。父親(44)も母親(43)もゴミだと思った。


「しかし、瓶の中からは、日本の高校生からのはがきが出てきた。「1984年7月に銚子沖で放流しました。お手数ですが、下記にご記入の上、 投函とうかん お願い致します」。日本語、英語など4か国語で書かれていた。


「この出来事は、ハワイの地元紙でも「映画の筋書きのようだ」と大きく取り上げられ、話題になった」


       ★ ★ ★


 発見者の少女は、わずか9歳。異臭の漂うボトルをよくぞ精査して、手紙を見つけてくれたものだ。


 放流した750本のうち、2002年までに50本が誰かに拾われ、銚子高校に戻ってきたという。回収率15分の1。そしてハワイで見つかったこの1本が51本目。


 ボトルメールはロマンである。宇宙ボトルメールみたいなサイエンス・フィクションはあるのだろうか? たとえば、地球の滅亡が迫り、宇宙の「各地」へとばらばらに移住していった人類の子孫。彼らが宇宙へ向けて、拾ってもらえる保証もないままボトルメールを流し続ける。


 ボトルメールは、べたに瓶に入った手紙でもいよいし、もっとハイテクな作りであってもいい。そういえば、ボイジャー計画の宇宙船は、異星人に向けたメッセージとしてゴールデンレコードを搭載していたわけで、ある意味ボトルメールのようなものだったのではないか?

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時空を超えて見知らぬ人をつなぐボトルレター―そのロマンと驚愕【コラム】 ミッキー大槻 @miccckey

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