第五話『真実の受容』

 訴訟の結果……


 【勝訴】


 と思いきや!!!


 猿が、まずい。


 猿は、突如として心膜炎しんまくえんになり、瀕死の重症。


 そういうわけで、犬と雉の二匹は、動物病院に、なかなか目を覚まさない猿のお見舞いをしにやって来た。


「おい猿ゥ! まじかよまだまだ若いし基礎疾患もないだろう!?」

 と、まだ家畜化されていない癖に狼狽ろうばいする犬。

「てか知ってるか? 噂によると、最近村で人がバタバタ死んでるらしいぞ?」

 と、小さな鳥頭とりあたまに冷や汗を垂らす雉。


 そこに、ダッシュで駆けつける若い男。


 超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももただった。


「貴様! よくもノコノコと亀のように!!」(※『太郎』違いである)

「おどれ桃カスぅ!!」

 ものすごい剣幕けんまくの、犬、雉。


「おい、犬、雉。一旦俺に対する怒りはどうにか脇においてもらって、聞いてほしいことがある」

 そう頼む超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたの表情は、真剣そのものである。


「「なんや! はよ言い訳してみろ!」」

 犬、雉は、噛み付く/つつく、一歩手前。


「実は、言い訳とかちゃうんよ。クエスト報酬独り占めとか、そういう次元のことちゃうんよ。俺も、知らんかってんけど……あの団子やばいらしい。犬、猿、雉にあげたあの団子、俺も結構な数食べたんやが、あれは……殺人兵器や!」

 


「「……??」」


 犬と雉の頭には、超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたの言うことがまだ理解できないでいる。


「落ち着いて、聞いてくれ。あの団子は、いわば、いつ爆発するかわからない爆弾のようなもの。団子を食べた直後、あるいは数日、数週間、数ヶ月、数年経ってから突然死したり、とんでもない体調不良になったりする。俺は、何にも知らんくって、ただただ美味いだけの団子やと思ってジッちゃんとバッちゃんに団子持たされて出て、犬、猿、雉にあげてもうたんや……」



 超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたは、そう、を告げた。



「待ってこれ、桃太、ほんまに何も知らんのやったら、ハメられたってこと? 全ては爺さん婆さんによる陰謀? しばかなあかんのはあいつらの方やったか!」

「こっわ! なんか怪しいなぁとは思っててん、あの老夫婦!」


 麻導薬草まどうやくそう『コロシタイベ』の供給源はもちろん、爺さんと婆さんの家の庭。


 犬と雉の怒りの矛先ほこさきは、一転、爺さんと婆さんとに向けられた。

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