第四話『おどれ桃カス』

——犬猿雉爺婆は、激怒した。



「なぁ、なんか不思議な気分になってて気づかなかったけど、俺らめっちゃこき使われてたよな? てか団子のせい? 団子ごときで鬼退治ぃ? 割に合わんて! 命と団子引き換えかよ! 株式会社ブラック・ロード・桃太、スーパーブラック企業!」

 と、犬。


「まじそれな!」

「許さんわ桃カス!」

 と、猿、雉。


「おどれ桃太ァ! あ、あんなやつフルネームではもう呼んだらん! 金銀財宝の一つもワシらに寄越してくれんのか!? ワシらの老後資金わい! 桃太ァ! 育ててやった恩を忘れたか! あのクソガキ!」

 と、爺さん。


「こんなことなるなら、桃割る時に一緒に真っ二つにしたったらよかったかもなぁ。あーし、判断ミスったかなぁ?」

 と、婆さん。



 (((((利害一致!!!!!)))))



 五者は結託けったくした。


「桃太、ぶち殺すか?」

 と、犬。

「いいや、社会的に抹殺しよや」

 と、爺。

「社会的? 俺ら野生動物には、ワイルドにぶち殺しが性に合うって〜」

 と、猿。

「でもあれや、桃太は既に〈デビルズ・アイランド〉に城を構えて傭兵ようへい雇いまくってるから、侵入してぶち殺すんは難いてぇ」

 と、婆。

「そうかぁ、カチコミは無理かぁ」

 と、雉。


「心配するな、ここ日の本は法治国家や、腕っぷしが無理なら知恵で行こや」

「そうそう、あーしら、こう見えても頭はえとるからのぉ」

 爺と婆は、悪人ヅラでそう言う。


「「「どうやって?」」」

 声をそろえて問う動物ズ。


「人間のワシらが、労基の監督官になるわ。そんで、ワシらは、犬、猿、雉が桃太を民事訴訟できるよう法的なサポートをする。『団子一個で働かされた! 最低賃金割ってます! しかも危険伴う! 怪我もしたから労災案件!』とでも訴えればええよ。で、法をもって、法外な賠償金を勝ち取る!」

 と、爺。


「でもタダでやってくれるわけちゃうよな? 爺と婆の分は?」

 雉が心配する。


「ならまず、損害賠償請求金額は、『567』タロー。あ、億、が抜けたわ、『567』億タロー。五者に各『100』億タロー。残り『67』億は聖人君子のごとく、村に寄付。あーしと爺さんの分は、勝ち取った後で寄越してくれ。持ち逃げは、許さんで?」

 と、婆。


 こうして、犬、猿、雉らによる桃太への民事訴訟手続きが始まった。

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