第二話『麻導薬草と団子』

 大きな図体もあってか、超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたはなんだか、やけに腕っぷしが強い。


 爺さんの音速の手刀を、利き手とは逆のチョキ(角度はギャルピである)で挟んで受け止めるし、婆さんとの潜水息止めバトルにおいては、婆さんの自己最高記録22分22秒を大幅に上回る、24分03秒という鬼強いスコアで、勝利している。


「婆さんや、超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたのあの身体能力、何かに利用せんか?」

「爺さんや、あーしもそう思っとった。どうせ拾った子や、〈デビルズ・アイランド〉にやって、悪魔倒してもらって、ついでに金銀財宝取ってきてもらおかね? これで老後も安心じゃ」


 爺さんと婆さんは、〈デビルズ・アイランド〉への桃太派遣に際し、最低限の食料と称して、庭に生えた麻導薬草まどうやくそう『コロシタイベ』を練り込んだ団子を、桃太にもたせた。


「おい、超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたや、これ、団子売れ残ったから持っていきな」

 婆さんは、禍々まがまがしい暗緑色あんりょくしょくをした団子をロッ個、いやナナ個、高額のくせに性能の悪い保管用冷凍庫に入れて渡した。

「なんだバッちゃん、今日も売れなかったのか。味はええんやけどなぁ。村の噂では、美味さのあまり団子食べた直後に泡吹いて死んだやつもおるらしいし? あ、小腹減ったし一つ摘んどこ」

 超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたは、半解凍状態の団子をシャリシャリと食べる。


「もう一個いっとこかな、いや二個、いや三個!」

 超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたのつまみ食いは止まらない。

「食っとけ食っとけ。どうせタダや」

 爺さんは超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたにそう促す。


「てか、ジッちゃんとバッちゃんはわんの?」

 超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたは二人に問う。


「(完璧な腹式呼吸で)もうだいぶ歳やからなぁ! ワシはもう甘いもんも欲しくならへんのや!! 最近は! なぁ? 婆さんや!!!」

「(ハイバァボイスで)ああ、そうそう!! あーしらもう食う元気もないからなぁ!!」

 爺さんと婆さんは、老人には不相応な馬鹿でかい声で、そう言った。


「おっけ、ならあと三個残ったやつ、持って行くわ。じゃ、行ってきまーす」


 超麻導剣士ちょうまどうけんしーブラック・ロード・桃太ももたは、悪魔狩りの旅へと、出発した。

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