第9話

「ココアでよかった?」


「はい、ありがとうございます」


 墓地近くのベンチで一息つくことにした。



「……」

「……」


 いや、それは話しづらいよな。

 でも俺の方から話し始めた方が絶対牧本さん話しやすいだろうし。


「あの」

「あのさ」


「あ、ごめん!牧本さんからどうぞ!」


「あ、はい、ええと……内藤君のさっき言っていた巻き戻さないでってどう言う意味かなって」


 やはり聞こえていたよなぁ。


「あれは、その、牧本さんが時間を操っていると言うか巻き戻しているのかなって……」


 やばい。

 牧本さんの顔がみるみるうちに青ざめていく。


「そ、そそ、それって皆!?皆知ってたの!?」


「いや俺だけのはず!多分!他の奴らは牧本さんが顔面レシーブしてたとか噛んで真っ赤になってだとか知らないから!」


 あ、やば。


 牧本さんの瞳が赤


◇ ◇ ◇


「黙っていて申し訳ありませんでしたぁ!」


「酷いです……そうやって私がドジってるのを笑って見ていたんですね……うぅ」


「待った!黙って見ていたのは本当だけど笑ってはいないから!ドジばっかりで、でも頑張ってる姿見て可愛いなって思ってたから!」


「頑張ってるのが……可愛い……うぅっ」


 今度は7時間の兆候!


「ストップ!!また巻き戻るよ!?」


「す、すみません!でも内藤君が変なこと言うから……」


 でも、本心なんだけどな。


「……」


 牧本さんは実は人見知りだ。

 よくクラスメイトと話していると思われているが、それはtake5の牧本さんだったりする。


「……幼稚園の時なんです、母が死んでからいつの間にか出来るようになっていたんです」


 、と牧本さんは言った。


 お母さんが亡くなって、お父さんと一緒に遊びに行ったある日、幼稚園のお遊戯会のこと。


「周囲の友達はお母さんが来ているのに自分はお父さんが来ているのが悔しくて、悲しくて恥ずかしくって……お父さんは何も悪くないんですけどね」


 それがきっかけで恥ずかしさを感じる度にタイムリープが起きるのだと。


 ……そんなこと、知らなかった。


「ごめん、牧本さんの事情も知らないで俺、牧本さんのこと付けたりして……」


「いいんです、こんな力本当は使っていけない……え?私の事付けてたりしたんですか!?」


「事情があるんだって!!説明させて!!」


 理由と原因を説明すると牧本さんは納得してくれただけでなくしょんぼりしていた。


「そんな迷惑かけていたんですね……やっぱ、こんな力使うなんて卑怯ですよね、皆はチャンスなんて1回しかないのに」


 後ろめたさはあるようだ。

 でも。


「牧本さんはその力を自分の為に使っているけどそれは自分が得するためじゃない、失敗したマイナスな自分をゼロにするだけ。だからそれは卑怯じゃないと思うな」


 俺なら宝くじとかに使いまくる。

 でも、牧本さんはそんなことしている姿を見たことがなかった。


「それでもやっぱり卑怯です……だから、私が幸せになる資格なんかないんです」



 無意識に出ている恥戻り、牧本さん自身は辞めたいと思っている、なら……


「それなら、特訓しないか?」



「え、特訓……ですか?」


「ああ、牧本さんが巻き戻さないでも自分に自信を持てるように恥ずかしいことを練習、いや、恥ずかしいことの回避方法を練習するんだよ」


 牧本さんは唖然としていた。

 それもそうか、クラスメイトとは言えほとんど話した事のない男から妙な提案されてるんだからな。


「ごめん、今のは忘れ」


「わかりました」


「……え?」


「特訓、付き合ってくれるんですよね?」


 マジか。


「いいのか?」


「内藤君が提案してくれたんですよ?それな内藤君も巻き戻りが少なくなれば過ごしやすいかなって」


 でも、牧本さんもそれだけ本気ってことか。

 なら……


「わかった」


 漢に二言はないからな。


「改めてよろしくな、牧本さん」


「……し、雫でいいです、これも特訓の一部なので……」


 いきなりハードル高いんだが……


「わかった、雫。じゃあ、俺のことも名前で呼んで欲しい」


「は、はい!ええと……もと、もとよ、もとよ……」


 そうだ!もとよしまでもう少しだ!

 ほぼ完成しているぞ!

 もう噛む要素はない!!


元良もとよし!!」


「……」


「……」


「う、うぁぁ……す、すいませんすいません!!うぎゃん!?」


「ちょ!?」


 牧本さんが謝り倒し、そしてずっこける。

 何とか支えようとするのだが俺もバランスを崩して牧本さんに押し倒された形になる。


 目の前に、牧本さんの顔。

 本当人形みたいで綺麗で可愛いな、キスできるくらい近い……って、牧本さんの瞳がこれ以上ないくらい真っ赤に染まる。


 ……これ、7日間だよな?

 でもいつもよりかなーり赤いんだが!?

 え、まさか……7週間とか!?


 それは、絶対に、やばい!!




「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁい!!」



「待って!!巻き戻さないでぇぇぇぇえ!牧本さぁぁぁぁぁぁぁん!!」


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巻き戻さないで、牧本さん〜学校一のハーフ美少女が実は超絶ドジっ子だということを俺だけが知っている〜 耳折 @mimioreneko

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