第8話
俺と牧本さんの家はそこまで遠くはない。
自転車で30分ほど。
そして空が赤くなったのはちょうどその中間あたり。
しばらく待つ。
そこは墓地だった。
大体7時間経過したがまだ来ない。
待つのは余裕なんだが、理由があって時間をずらしてるのか?
「あの、やめて下さい!!」
雲の場所とは少し外れの場所から牧本さんの声。
「えぇ、別に少しくらいいいじゃん!ちょっとだけ、ちょっとだけ遊ぼうよ、ね?」
うわぁ、黒髪のいかにもって感じのホスト風イケメンが絡んでいる。
というか墓地でナンパするな罰当たりめ。
ま、これもまた巻き戻しで……
「お願いです、用事があるんです!」
「じゃあその用事が終わるまで待ってるから、ね!」
何で巻き戻さない?
こいつに絡まれても、ここで今やりたいことがあるのか?
牧本さんが男から逃れようと手を振り解くが、その拍子で手から何か落とす。
「何この花?もしかして俺に!?」
「っ!!」
「じ、冗談冗談だよ、墓参りでしょ?ほら早く行ってきなよ、待ってるからさ」
「嫌です、帰ってください!」
「ってめぇ!!可愛いからって調子に乗ってんじゃねぇよ!!」
男はブチギレ拾った花を思い切り地面に投げつける。
「何でこんな酷い事を……」
「いやいやいや、少しだけ遊んでくれって言ってるだけじゃん、それよりもっと痛い目に遭いたいの?」
……あー、無理だこいつ。
「どうしたんだ雫?知り合い?」
「え!?あ、な、内藤くん!?」
「は、なんだお前?」
「いやいや、そっちこそ人の彼女に手出してんじゃねぇよ」
「適当なこと言ってんじゃねえ!!お前みたいな不細工が釣り合う訳がぁぁぁぁぁあ!?」
胸ぐらを掴んできた男の手を捻り上げる。
ちなみにこれも牧本さんのお陰。
昼間は勉強、そして夜は余った時間で筋トレや護身術をしていた成果だ。
牧本さんも驚いていた。
昼の運動は巻き戻しで無駄になることが多いのでほとんどしていなかったから、周囲からは勉強大好き野郎に見えていただろうし当然だ。
「わ、わかった!わかったから!離してくれ!!」
手を離すと一目散に逃げて行く。
「逃げやがって……弁償しろよクソ男」
「あ、あの……」
「あー、ごめん。偶然見かけて困ってるみたいだったからつい」
「……」
「あの、牧本さん?」
「あ!いえ!助かりました、何度も絡まれていてどうしようかと……あ!何度もって言うのは1日に何回もって訳じゃなくて色んなところで絡まれてるってことですからね!?」
説明しなければスルーされるのにテンパって懇切丁寧に説明している、牧本さんらしい。
あ、やばい。
目の色が変わる、それにこれは……7時間の巻き戻しだ!!
待て待て!今巻き戻したらまたあいつとやり取りするのは御免だぞ!?
「牧本さん!そんなに巻き戻したらまたあいつと会うことになるよ!?」
「へ、あっ!そうでしたねすいません!私つい……………え?」
「……………………………あ」
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