鎧3・始めてのお仕事ですわ!!

「う~ん、沢山ありますわね……どれにしようかしら……」


冒険者ギルドの窓口横にある、掲示板に貼られている沢山の依頼書を眺める。

私でも出来そうな簡単な物を……下水で鼠退治……却下、ダンジョンでゴブリン退治……却下、……畑で芋掘り『マンドラゴラの当たり付き』……却下!!


良いのがありませんわ~


「……おい……怖すぎて依頼書見れないぞアレ……」


「何かブツブツ言ってるし、近寄ったら殺されるんじゃね……?」


「絶対何人か殺ってるだろ……、あんな禍々しいの見たことねぇよ……」


後ろから何か聞こえますけども気のせいですわね。

さて、何か良さそうなのは……あら?……近隣の森で薬草採取……量に応じて追加報酬有り……これですわ!!

依頼書を剥がして受付へ行くと、鎌と大きな背負い籠を渡された。


「こちらをお貸し致しますのでお使い下さい、籠半分程で依頼の達成となりますが、それ以降の採取量でお支払する金額が増えますので沢山採って来る事をお勧めします」


籠半分……かなりの量になりますわよねこれ、持って帰れるかしら?

大人一人入りそうな籠を背負い鎌を手に取ると受付を離れ総合ギルドを出ていく。


「ヒィ!?」


「うわぁぁぁ!!」


「ママー!!怖いよー!!」


薬草採取の為に森へ行こうと街中を移動していると人々が叫びながら逃げて行く。何事かと思ってふと気がついた。

……ああ、鎌持って歩いてるから怖がってるんですのね。

この姿ですしそりゃーそうですわ、これは籠に入れておきましょう。


……早く鎧脱ぎたいですわ……


街の外に出て森へと向かう、雲一つ無くて良い天気ですこと、こんな鎧着てなきゃもっと良いのに。

街道から少し逸れて小道を進んで行く、街道程ではないがそれなりに舗装されていて石等もあまり落ちていない、定期的に清掃でもされているのかしら。


段々と木々が増えてきて花や草も生えている、この辺りだろうか、え~っと薬草は……ああ、ありましたわ、二等辺三角形の葉が二枚に白い筋、依頼書にあったやつですわ。

結構群生していてあっちっこっちに生えている、それでは採っていきましょうか。

葉を摘まんで根本を鎌で切って籠に入れる、しかしあれですわね、沢山生えてますから探す手間はないけど……これ籠に半分は必用なんですのよね……

実に面倒……とはいえ他に出来そうな事もないですし……やるしかありませんわ。


手当たり次第に薬草を採取していく。時折鳥が鳴いたり小動物が走り抜けて行きますけど至って平和ですわ。

最も……こんな全身鎧が鎌持って森の中で草刈ってるとか異様だと思いますけども。


どれくらい経ったか、森の中で日も余り射さないので分かりにくいですわね。見れば薬草は籠半分以上は入っている、ふむ……戻ってもいいけど、もう少し頑張ってみましょうか。


周囲の薬草は粗方採り尽くしたので奥の方へと進む。

先程の場所よりも更に暗く、空も見えない、薬草を採りながら先へと行くと。


ガサッ


前方の草が揺れた、何かしら?そちらを見ていると何度か音をたてながら草が揺れて……何かが草むらから出てきた。


「っひ!?」


思わず悲鳴を上げる。

茶色い鼠だった、但し物凄く大きい、大型の犬くらいはあるような……

も、もしかしてこれが魔物!?初めて見ましたわ、狼よりも凶暴で強いとお父様やセバスが言っていましたけど……


鼠はこちらに気が付いたのかシャーと威嚇をしながら少しずつ寄ってくる。

思わず後ずさる、これどうしたらいいんですの……?私魔物となんて戦ったことありませんわよ!?というかあまり身体動かしたこともないですわ!!


そうこうしていると、鼠は目の前までやって来て……飛びかかってきた。


「きゃあぁぁぁ!!」


叫んで思わず右手で振り払う。


「ッジュ!!?」


すると手に当たったのか、鼠が……吹き飛ばされて近くの木に叩きつけられて、動かなくなった。


「……?」


何が起きたんですの?右手と鼠を交互に見る、多分当たったんですわよね……?

少し様子を見るも動く気配がないので近寄ってみると、し、死んでますのこれ……


私魔物一撃で倒すなんて出来ませんわよ……?何故このような……


……もしかしてこの鎧のせいで?というかそれしか考えられませんわよね……

あ、でもこれ、今後も使えそうですわね……とはいえ脱げないの困りますけど。


気を取り直して薬草の採取を再開する、続けていると籠も一杯になったので冒険者ギルドに帰るとしましょう。

ずしりと重い籠を背に森を出て帰還、ざわつくギルド内を進んで受付へ、職員に籠を渡して鎌も返却する。


「はい、依頼達成ですね、追加分も上乗せしてお支払します。どうでしたか?森での採取は」


「大きな鼠が出てきた以外は、まあ何とかって感じでしたわね」


それを聞いて職員の顔が驚きの表情に変わった。


「え、鼠!?まさかラージラット!!?何であそこに……あ、大丈夫でしたか?怪我とかは?」


「いえ、飛び掛かって来ましたけど何とか倒せましたので……」


実際は運良く右手が当たったのと、この鎧のおかげですけど。


「そ、そうでしたか……お強いんですね、あれって初心者だと数人がかりでやっとなので」


言われて驚いた、そんな強いんですの!?あの鼠。……この鎧凄いですわね……


「えー、ではこちらが報酬の銅貨50枚に加えて追加の40枚、計90枚ですが、冒険者登録は致しますよね?」


「ええ、お願いしますわ」


「では登録に50枚頂きます、それと仮の冒険者証は回収しますね」


首にかけていた冒険者証(仮)を手渡すと目の前に銅貨の入った小袋と銅製のカードが置かれる。


「銅貨40枚と冒険者証ですお受取り下さい。冒険者証は紛失されますと再発行に銅貨50枚がかかりますのでお気をつけ下さい」


冒険者証に付いている紐を首にかけ小袋を受けとる、これで正式に私も冒険者ですわ~!!

さて、お金も手に入りましたし……宿泊先を探さないといけませんわね。

良いお宿が見つかると良いのですけども。

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フルアーマードお嬢様は鎧を脱ぎ捨てたい トイレの花子 @toiko290141

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