京都日帰りデート旅行

kこう

楽しい旅行

「「とうちゃーく」」


 電車のホームから出た俺たちは長旅定番の到着宣言を二人で手をつないで大空に手を万歳する。

電車を乗り継ぎおおよそ2時間をかけついたのは観光名所である京都だ。

 平安時代一番栄えたであろう町がここにあったためその時の建造物が多く残っており、修学旅行だけでなく海外にも日本でも大人気の観光名所だ。

 そんな観光地にやってきたのは俺、青木大智(あおきたいち)そして俺の彼女である斎藤雫(さいとうしずく)である。二人とも高校1年生で昔からの幼馴染だった俺らは今年、念願の恋人になることができた。


 俺は中学校から思いを寄せて居だんだが、どうしても自分に自信がなく高校で告白すると必死で自分磨きをし、釣り合うとまではいかなくても足元に入れるぐらいの存在になることができた。一方向こう側もうれしいことに俺に少し惹かれていたようで俺が高校生になった時に思い切って告白したら成功できたというわけだ。

 なので、今はとても幸せな毎日を送っており、今日は秋休みを利用して日帰りの旅行をすることになったのだ。

 本当なら一泊ぐらいしたいものだがまだ俺たちは高校生なので残念ながら今回はそれを断念した。


「大智どこから見る?私、お寺見たい。」


「おーけー。じゃあ最初はそこを目指そうか。」


「あのー…お二人さん、旅行で浮かれる気持ちもわかるんだけど少し待ってくれません?」


「おっと、すまんすまん」


 後ろからカバンを持ってこっちに来たのは、俺の大親友である宇野神楽(うのかぐら)だ。ちなみにツッコミ役だが若干ぬけているというそんなやつだ。そして…


「…あ、ついたー」


「おう、遅いぞ。由衣」


「ごめんねー。ちょっと掲示板みててー」


 こちらにいるゆったりとした声のマイペースな女の子は天野由衣(あまのゆい)、そう、かぐらの彼女である。この子は神楽が入学してからずっと一目ぼれしており、今年の夏に神楽が告白して結ばれたというわけだ。

 そう、何を隠そう今回の旅行は神楽と由衣さんが結ばれたことへのお祝い旅行なのである。

 …ちなみに由衣さんは雫ととても仲がよく、親友と呼べるぐらい一緒にいる。まあつまり今回は、ダブルデートというやつをやるのだ。


「よし、それじゃあどうする?同じ場所めぐるか?」


「うーん俺的にはどっちでもいいが…由衣はどうしたい?」


「わたしー?わたしは食べ物食べたーい」


「…だ、そうだ。」


「了解、じゃあ俺たちはお寺巡りしてるから3時にここ集合ってことで」


「おっけー。…じゃ、またあとで」


「いってらー」


 とまあ、あんな感じで由衣さんはだいぶマイペースな人で神楽はそれに振り回されているって感じだ。まあ二人とも幸せそうなので気にする必要もないのだが…

 

「さーて、じゃあ俺たちはお寺に行きますか」


「そうだね、いざ敵地へゆかん!」


「レッツゴー」


***


「おー金ぴかー」


「すげぇ、めっちゃ綺麗」


 まず最初にやってきたのは京都の定番の観光地の一つである金閣寺である。かの有名な足利義満が建てたといわれている建物で、湖の上に建てられたその金色に光るお寺はその当時の義満さんの権利の大きさを表しており、自然に溶け込みながらも存在感を放つそのお寺はいつ見ても美しい。


「みて、あのお寺の一番上についているのが鳳凰だよ。」


「え?鳥さんいるの?…あ、ほんとだ!金ピカの鳥さんだー。」


 手で望遠鏡を作るようにして周りを見渡し、その鳥を見つけた雫は嬉しそうに話す。

 挙動一つ一つが大袈裟なのが彼女の特徴の一つでとっても可愛いと思う。


「よし、じゃあそろそろ写真でも撮りますか。」


「いいねぇ、よし、じゃあどんな風に撮る?」


「そうだなあ、やっぱ木の隙間から見える感じだときれいじゃない?」


「おお、いいねえそれ。じゃあこっちで撮影しよ」


「よっし、じゃあ任せとけ。今日のために買った自撮り棒の力見せてやる。」


 自撮り棒定価2300円。この日のために使いかたを練習してきれいに撮れるようにしてきたぜ。


「雫、もうちょいこっち来て。」


「あ、うんこの辺?」


「うーんもうちょっと左」


「えーっと…」


「あーもうちょい右、違う行きすぎ!あ〜、じれったい。雫!こっち」


「わっ」


 動きすぎるあまり、カメラから外れ続ける彼女にじれったくなった俺は手っ取り早くやるために彼女の肩を俺の方に寄せてシャッターを押す。


「お。我ながらきれいに撮れてる。雫見てみて。…雫?」


「…たいち、いきなり肩掴まれるのはびっくりするからやめてね」


「あ…そりゃすまん。」


「まったく。これだからたいちは…いきなりは恥ずかしいじゃんかさ。まったく…ぶつぶつ」


 ぶつぶつと文句を言いながら俺の前を去るようにその場を彼女はさる。

 耳が少し赤くなっているあたり思っているより恥ずかしかったらしい。それをまた俺も今更少し恥ずかしい気持ちが湧くと同時に雫の可愛さをより実感するのであった。


「あ、雫?もう少し写真とかとったら次のお寺にバスで行くよー」


「あ、はーい」


***


 一方そのころ、由衣に連れられた神楽が向かったのは京都の商店街。あらゆるお店が立ち並び、いろんなところからおいしそうなにおいが漂っている。


「神楽おそいー、早く来てー。」


「わかったから、せめてどこに行くのかぐらい教えてくれ。もう30分ぐらい坂登りっぱなしだぞ」


「安心してー、後もうちょっとだからー。それにきっと神楽も気に入るよー」


「はぁ、さいですか。なら私はあなたにどこまでもついていきますよ」


****


「まずはここー。抹茶アイス屋さんー」


「ほー確かに有名だな京都の抹茶アイス。こんなところにもあるんだ。」


「ここねー、結構有名なお店ー。」


「そーなんだ。…じゃあ抹茶ソフト二人分買ってこればいいか?」


「んー、一つでいいよぉ。」


「え…?一つ?大丈夫か?それで足りるのか?」


「今日は色々食べるし、セーフセーフ。」


「あーなるほど。じゃあ一人分大きめでにするか?」


「うん、それでおねがーい。」


 要望を聞いた俺は店内にある抹茶ソフトクリームを売っている受付前の少しの列に並ぶ。

 流石に有名なだけあって人が結構いるのがわかる、うーん、大体3分ぐらいの待ち時間だろうか?


 「…いやー、それにしてもまさか食いしん坊の由衣からそんなセリフが出てこようとは。あの由衣がセーブしようとするなんて今日はいったいどんだけ食うつもりなんだ?」


 俺の彼女である天野由衣は大食いだ。いつも弁当は2箱持っているのがデフォルトでレストランとかいっても普通の人の倍は食べる。

 普段のおっとりとした見た目からは想像できないぐらい食べるから初めて見た時は正直驚いた。

 けど食べ方が可愛いのと美味しさそうに食べている姿が素敵で今ではそれも彼女の魅力だと思っている。

 …お、もう俺の番か


「いらっしゃいませ、ご注文は何にされますか?」


「抹茶ソフトの大一つ」


***


「おー思ってたよりおおきい」


「ほんとに、サービス精神豊富な店員さんだよ。」


 俺の手元にあるのは6段抹茶ソフトクリームだ。俺たちが普段食べているのがおおよそ2〜3段でそれにプラス3段だと考えると相当大きいと言える。

 だって一巻き3cmだせ?一応看板のソフトクリーム3段だったぞ?

 まあ、普通に嬉しいからなんの問題もないんだが…


「じゃあ、はいどうぞ」


「ありがとー、いただきまーす。」


ーパクッー


「んー、程よい苦さ。おいしい。」


「よかったな。あ、後でちょっと分けてくれ、俺も少し食べたいから」


「ん、いいよ。…はい、あーん」


「え?」


 …え?あー、そうきます?…てっきり俺の想定ではスプーンか何か借りて普通に一巻き分ぐらいもらうつもりだったんだけど…


「んー?たべないのー?、あーもしかして神楽恥ずかしいのー?」


「うっ…」


「大丈夫だよー。気にしないでー、元々二人で食べるように買ったんだしー、もう付き合ってるんだからー。」


「…そうなんだけど、でも…」


「…じゃあ、神楽は私のこと、嫌い?」


「…それは、卑怯じゃない?」


ーパクッー


「…あ、美味しい。」


「でしょー?…うん、やっと食べてくれて嬉しい。だから、はいもう一口、一緒に食べよー」


「…まあ、そうだな、」


 せっかく念願の恋人関係になれたんだしこういうのも楽しまないとな、正直まだ恥ずかしいけど少しづつ慣れていきたいし…

 二人で分けた抹茶ソフトはほんのり熱を持つ体にとてもよく沁みた。秋には秋ならではのアイスの風味があるものだなぁと俺はそう思った。

 まぁ、今の状況が秋のものかと言われたらなんとも言えないが…


「ん?あ、由衣ほっぺに抹茶ついてるぞ。スプーンで食べる時、急ぎすぎて飛びちったんじゃないか?」


「んー?どこー?」


「ちょっととまって、」


「…うん?」


 そういって俺は抹茶のソフト少しついている彼女のほっぺたに指先を伸ばしてそれをとる。

 そしてそれを口に運びぺろっとその抹茶を舐める。


「…あ、」


「ん、やっぱりいい抹茶だなぁ。あとで1個ぐらい買ってくか」


 そうそう、マジで一度くらいやってみたかったんだよね、ほっぺについたやつとるの。さっきあーんしたし、せっかくの旅行だから俺も挑戦していかないとな。

 まあ、本来ソフトクリームでやるもんじゃないけど…


「…よし、由衣。俺ちょっと抹茶買ってくるから残り食べといていいよ。」


「…う、うん。」


「ん?どうしたんだ?なんか少し顔赤いぞ?言葉の歯切れも悪いし体調でも悪いのか?」


「…神楽、バカ。アホ、鈍感」


「わぉ、なんという言われよう。…体調大丈夫なのか?」


「…それは…別に大丈夫。」


「ならいいんだが…じゃあ、ちょっと買ってくるな」


 その後、しばらく食べ歩きをしたのだが何故か少し彼女の対応が冷たくなっていた。

 …もしやさっきのやつは急に顔に触れてきて怒っていたのか…?


***


「たーいちー、」

 

「おお、どうした?神楽」


「ちょっと相談聞いてくれー。」


 その後俺たちは時間通り3時に集合し、とりあえずみんなでお土産を買う時間なった。

 そしてそこにはヘナヘナになった神楽がいた。…大体こういう時は由衣さん関連で何かあった時なのでこれから俺は由衣さんについて神楽と相談会をすることが決定した。


「あー、たいちー。あっちのお土産屋さん行こー。」


「あ、雫。ごめん、ちょっと神楽の相談会してくるから後でいい?」


「…あー、わかった。じゃあちょっと別のお店見てくるね」


***


 私は神楽くんを連れて少し人気のないところに連れて行ってる姿を眺めていた。

 あの感じだと多分、神楽くんが由衣ちゃん関連で何か相談があるのだろう。二人が結ばれる前にもあんな感じでよく私たちに相談しに来たことが多かったのでなんと無くわかる。


「…本当はたいちと買い物したかったなぁ」


 とはいえ、ああやって優しく人の相談乗ってあげてるのもの彼の魅力の一つで私が好きなところの一つだから特に悪い気持ちはしない。


「…さて、二人の相談終わるまでどこ行こうかなぁ」


 そういえば近くのお店に試食できそうー


ーぐぃー


「…おっと?」


 私が気持ちを切り替えて、時間を潰そうとその場から離れようとした瞬間私は横から誰かから服を引っ張られる。

 びっくりしてすぐに横を見るとなんかいつもより弱々しい由衣ちゃんがそこにいた。

 …正直もうなんとなく予想はできたが、一応真意を確かめておくか…


「え?由衣ちゃん?いつから?ていうかどうしたの?私の服引っ張って」


「…そーだん。」


「…わかったよ。じゃあ、うん、あっち行こうか」


 追記、よく相談にきていたのは神楽くんだけではない。由衣ちゃんもよくこっそり私に相談をしにきていたのだ。…この二人、実は思っているより結構前から両思いだったのだ。


***


「…なるほど、大体事情はわかった。ソフトクリームの抹茶のやつがついたほっぺのやつを手で取ってから食べ歩きしてる間、なんか少し冷たかったと」


「…そう、食べ歩き自体は楽しめたし、嫌われたわけじゃ無さそうだけど、やっぱりなんか不快だったのかなって、謝った方がいいのかなって」


「…あー、うん。お前が謝りたいなら謝ればいい、以上閉廷!」


「え?今までで一番短いんですけど…ていうか口調強ないすか?」


「あたりまえじゃ、この天然鈍感たらし野郎が」


「ひどくない!?あと、俺できればなんでああなったのか理由も知りたいんだけど…」


「んなもん、本人から聞け!そんくらい勇気出せや、ヘタレが」


「なんか今日、大智厳しくない!?罵詈雑言の嵐なんですけど」


「うっせぇ、バカが。気になるなら勇気だせ、これが俺のアドバイス、以上!」


 あー、なんか相談乗って損した。こんなんなら雫と買い物行った方がよかったわ。

 うん、まあこいつら幸せそうだからいいけどね!


***


「あー、なるほどねぇ。嬉しかったけど恥ずかしくて少し冷たくしちゃったってことね。」


「…うん」


「まあ、神楽くん鈍感だしね、多分なんでこうなっているかもわかってないんだろうね。」


「…神楽、バカ」


「…まあ、否定はしないけど。…それで、由衣ちゃんはどうしたいの?」


「…誤解解きたい。」


「…うん、そうだね。じゃあ神楽くん話に行かないとね。」


「うん、ありがと…」


 弱々由衣ちゃんはいつものおっとりさがなくなって小動物みたいになってしまうという特徴がある、それがまた可愛いし、相談内容もかわいい。

 二人が幸せに過ごせているようで何よりである。この調子ならきっとうまく行ってくれるだろう。こんな初々しく可愛いんだから、二人とも


***


「あ、由衣!あのさ…」


「…ねぇ、神楽ー。」



 あのあと雫と俺で二人が話す機会を作って見るとあっという間に誤解が解けてお互いに和解した。さすがなことだけあってお互いに以心伝心である。

 今は二人とも少し顔を赤らめながら手を繋いでお土産を買っている。

 そして俺はそんな姿を雫ともに横で眺めていた。


「あの二人、やっぱりすぐに仲直りしたな」


「そりゃ、二人ともお互いのこと大好きだし。」


「俺は友人が良い彼女を持てたようで嬉しいよ。」


「そうだね。幸せになるよきっと彼女たちも、私たちも」


「そうだな。…じゃあお土産買ったら清水寺に行こうか」


「だね、」


 その後みんなで行った清水寺ではたくさん写真を撮って、いろんな思い出を作ることができた。ちゃんとみんなで恋が続くように水を飲んだしな。

 それに、清水前の通りでもたくさんお土産を買えた。八ツ橋うまかったなぁ…

 …流石に、試食の八ツ橋を由衣さんが食い尽くそうとしたのは驚いたけど。


 まあ、ともかくこの旅行は大成功だろ。この旅行を通して俺たちはより仲良くより良い関係になれたし、…少し神楽たちの援助役になってたとはいえ、雫とも楽しくデートできてたくさん写真も撮れた。それに、初々しいカップルも十分崇めたし大成功だ。



 …うーん、さて、次の旅行はどこにしようかな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

京都日帰りデート旅行 kこう @kwkou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ