第3話 異種族との遭遇
しばらく走り続けると、地面にペタリと弱々しく座り込む女の子の姿を発見する。そんな彼女の視線の先には、十メートルはあろうかという巨大な双頭の蛇が。
「なっ!?」
あんなヤバそうなモンスターがヴェスティリス家の領地内に!?
ていうか、カルドア王国内にある領地には代々ヴェスティリス家が結界魔法を展開してモンスターや侵略者が入り込まないようにしているはずなのに――って、今はそんなことを考えている場合じゃない。あの子を助けなくちゃ。
「ここは俺に任せて下がっているんだ!」
どういう理屈でモンスターが出現したのかは分からない――けど、目の前で人が襲われているのは事実。
俺は女の子を助けるために双頭の大蛇と対峙。
新しいエサと認識し、襲ってくるモンスターに対して、俺は闇魔法を発動させた。
途端に、俺の全身を青い炎が包み込んだ。突然の事態にさすがのモンスターも動揺したようで攻撃をためらうが、俺にとってはまさにそこが狙い目。動きが鈍くなった一瞬を逃さずに青い炎を解き放つ。
完全に虚を突かれた双頭の大蛇は回避が遅れ、あっという間に炎の中へと呑み込まれていった。
のたうち回っていた大蛇が大人しくなり、死んだことを確信すると、俺は女の子へと近づいていき、その顔を見た瞬間――思わず驚きに目を見開く。
美しい金髪に青い瞳。そして何より大きく尖った耳――女の子はエルフ族だったのだ。
「エ、エルフ族?」
「は、はい。私はエルフ族のユーリアです」
「あっ、俺はルーシャス・ヴェスティリスと言います」
「ヴェスティリス?」
唐突に始まった自己紹介を終えた途端、女の子の顔つきが変わる。
そうか。
異種族であり、しかも人間との交流が少ないエルフならうちの名前を知らないのは当然だ。
そう思っていたのだが……彼女が食いついたのはまったく別の部分であった。
「あなたはもしかして――人間ですか!?」
「えっ? ま、まあ」
「う、嘘……信じられない……でも、その姿はまさに噂で耳にした通りの姿!」
……何を言っているんだ?
この子、まるで人間をレア種族みたいに言っているぞ?
そんな大層なものじゃないだろ。
人間なんてそこら辺にたくさん――
「まさか……」
嫌な予感が脳裏をよぎる。
「あ、あの」
「なんでしょうか?」
「人間って……俺以外にいるのか?」
冗談半分に尋ねてみるが、女の子は真顔で答える。
「いえ、人間と呼ばれる種族は千年前に滅んだと言われています――が、あなたがここにいるということは今も人間は世界のどこかで暮らしているんですよね?」
「…………」
ちょっと待て。
今、この子はなんて言った?
人間が今から千年前に滅んだって?
……嘘だろ?
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