第3話
王宮に向かうまでの道中、パンセとポンセはアマナに対し、この世界に住む種族について説明する。
「大昔に、魔界の王アージマンって奴と地上の人類達で戦争になったんだ。その時は只人と私たちエルフのような“亜人”は協力してアージマンを地の底に封印したんだけど……」
「平和になってから、知恵と数で上回る只人達は国を作り政治を始め、亜人達を見下す様になったのさ」
この世界において、亜人達は被差別的扱いを受ける者が多く、多くの国では奴隷や下等国民として扱われる。
「でも、陛下と殿下は他の只人とは違うわ。オーバーン王家は亜人達の文化を尊重して領地のいくつかを亜人の集落として解放しているのよ」
それにカスターが付け加える。
「人の命には、それぞれの価値がある。只人と亜人の命に軽重の差など無い……僕は国中の只人と亜人に、ともに手を取り合って欲しいのさ」
「殿下はきっと、良い王様になれますね」
アマナはにこりと笑って微笑む。
「……ありがとう」
─オーバーン王宮
アマナが王への謁見をする事になった際、国王のは難病を患っていた。しかし、毒に冒されたカスターを救った時と同じく、アマナの生み出した菓子により、国王の病は快復する事となる。
「礼を言う、アマナ殿」
国王ことキャラメ・ル・クリム4世はベッドから上半身を起こし、アマナに頭を下げる。
「そなたの生み出した奇跡の菓子は、見たところ焼き菓子の様だな……そして、これには我が国の未来を感じる……ならば、国の名を背負う焼き菓子、“オーバーン焼き”と呼ぶのはどうだろう?」
国王が言うと、
「オーバーン焼き!素敵な名前じゃない」
「アマナさんの名前から取って“アマタロー焼き”とかも候補だったけど、オーバーン焼きがしっくり来るな!」
パンセとポンセは言う。
「国の名前をなんて、恐れ多いです……」
申し訳なさ気なアマナの手を、カスターは握る。
「いや、君はそれだけの働きをした。私だけでなく父上の命まで救ってくれたのだ。感謝してもしきれない……ありがとう、アマナ」
「カスターの言うとおりだ。其方はオーバーン王国を救ったも同然!“聖女”アマナと“奇跡の菓子”オーバーン焼き!これらがある限りオーバーン王国は安泰であるぞ!」
国王からのお墨付きを頂き、アマナとオーバーン焼きの名は国中で知られることとなる。
そして、いつしか国外にもその名は轟く……
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