腐乱死体に手をあわせ

釣ール

ここはそういう世界

 昔の人は線路沿せんろぞいでよく死体を見たことがあるらしい。


 すぐそばから死はやってくる。

 思いもよらない形で。


 今日ぼくが歩いた後にも誰かがいなくなるのだろうか。


 もし残酷ざんこくな現実だけが永遠に支配する世界にぼくたちが生きているのなら。


 産まれた時にいちいち「恵まれているのか?」「人として最善さいぜんな環境か?」を考えないといけないのか。


 ぼくは腐乱死体ふらんしたいに手をあわせた。

 本当はいけないらしいけどそうせざるをえなかった。


 ぼくもいつかここではないどこかでたおれると考えているから。

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腐乱死体に手をあわせ 釣ール @pixixy1O

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