廊下

生活

廊下

玄関から、リビングの手前まで長く長く続く廊下。

トイレへ行く度、私はこの長い廊下を三回大きくジャンプして向かいます。

帰りにも必ず二、三回ジャンプして帰ります。

学生の頃バレーボールをやっていた名残で今も必ずジャンプするのです。

両親はまたやっている、と思うけれど言う程でも無いと叱ってはこないのです。

この廊下を通る時、想い返すのです。

私の家族全員が、私が産まれる少し前から今に至るまで、この廊下を通ってきたことを。

バレーボールをしていた時だって、両親がお迎えに来てくださった時、リビングにいる家族に元気よくただいまを言うために走って帰ってきた時もあれば、上手くいかなくて叱られながらリビングを横目に部屋に入ったこともしばしばありました。

恋人ができた時には、家族が起きないようにそっとそっとこの廊下を通った事もございました。あれほど冷や汗をかいた夜は初めての事でした。悪めかしく笑みを浮かべる彼女を見て、妖怪のように見えたことはここだけの秘密でございます。

毎日毎日踏んできたこの廊下にも、とうとうおかえりを言わなくなってしまいます。


私は後悔しています。ご両親に多大なるご迷惑をかけてしまった事を後悔しているのです。後悔しても後悔しきれません。

私は何かにかけてご両親に反抗ばかりする性格でしたので、きっとご両親は何度も私を捨てようか悩んだ事でしょう。いっその事物心つく前に、川か山の麓にでも捨てていただけたならこの後悔もなかった事でしょう。母に向かってなんで産んだんだ、と言ってしまった事を未だに思い出しては枕を濡らす夜が何度あった事でしょうか。父の言った、お前が元気でいてくれたらそれでいいが、私の首を絞めてたまらないのです。

使命や命題とか運命などといった言葉はあまり好きではありませんが、私には家族を愛する使命がきっとあると思うのです。愛することで晴らせる贖罪でないのはわかっているのですが、そうすることしかできないのです。愛した果てにこのまま朽ちてゆく両親を空まで見送ったら、私もご両親から愛のおかえりをいただけるでしょうか。

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廊下 生活 @seikatu

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