第9話

「ここら辺ですか?」


「多分...あの家」


そう言いながら私は2階建ての家を指さした。


「普通の家ですね...」


「そりゃあ一般人だから」


「じゃあ入りますか」


そう言って陸久は私の腕を引っ張った。


「あ、でもお姉ちゃんに私の姿見えてないかも」


「確かにそうですね」


「だったら僕が代わりに行ってきます」


「ありがとう」


「一応、一緒に行きますか?」


「うん」


陸久はガチャという音と共に鍵を開け、


扉を開く。


中からは


「今行きまーす」


という声と共にドタドタと階段を降りて来る


姉の姿があった。


だが私の知っている姉の姿とは全く違い、


ガリガリに痩せていて目の下にはくまがあった。


その時、陸久の顔を見た姉は


「ひっ」


という声と共に後ろに少し下がった。


「来ないで!なんで来たの!?」


そう大声を上げる。


知り合いなのだろうか?


だとしたらどういう関係なのだろうか。


そんなことを思いながら私は自分の首を触った。


するとピリッという音と共に


何かが剥がれるような感覚がした。


私は驚いて自分の手に持っているものを見ると、


それは私の肌と同じ色の何かだった。


「これって特殊メイク...」


びっくりしすぎて思わず声に出してしまったと


思ったが2人には聞こえていないようだった。




「じゃあそろそろ帰りますね」


そう言い、陸久は姉に微笑んだ。


「その顔!その顔だけ似てるのムカつく!!」


「お前だけは絶対に許さないから!」




「人のこと言えないくせに」




姉の言葉に低い声で返す陸久。


今、陸久はどんな顔をしているのだろうか。


そう思い顔を覗こうとしたが


また避けられてしまった。

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