第10話
家の外に出てもまだ姉の声が聞こえる。
「陸久って私のお姉ちゃんと知り合いだったの?」
「いいえ、全く?」
「全然知らない人です。誰かと見間違えたんだと思いますよ」
「...そっか」
全く知らない?
じゃあさっきの言葉は誰に向けて言った言葉なの?
考えれば考えるほど意味が分からなくなる。
「そういえば陸久って兄弟いるの?」
私はこの重い空気を変えるため、
違う話題を提案した。
「兄が1人居ます」
「会ってみたいな〜....なんて」
そう言うと
「じゃあ会いに行きますか」
「僕も久しぶりに会いたいですし」
さっきからどことなく恐怖感を感じるのは
何故だろうか。
私の家から歩いて数十分、
「ここです」
そう言って指さした家はいかにも普通の家。
陸久は玄関に向かってドアを開ける。
まさか鍵を閉めていないとは...
「泥棒入りそう...」
「何がですか?」
「鍵閉めてなかったから」
「あぁ、全然大丈夫ですよ」
「あ、陸久じゃねぇか」
「なんで帰ってきたんだ?」
部屋の奥から背の高い男性が
こっちに向かってきた。
あ、この人...お姉ちゃんの彼氏だ。
だから陸久の顔見た時、
誰かに似てるって思ったのか。
「水戸さんが会いたいって言ってたからだよ」
「水戸?俺の彼女の水戸?」
「いや、彼女さんの妹の方」
「あぁ...殺したやつね?」
殺...?え?どういうこと?
私はこの人に殺されたってこと?
嘘だ。私が最期見た顔はお姉ちゃんだった。
その前に、
なんでこの人は軽々と『殺した』なんて言葉を口に出せるのだろうか。
「そうそう。その人が兄さんに会いたいって言ってて」
「また幽霊か?」
「そう」
「なるほどな」
「で?質問は?」
〈何で私を殺したの?〉
そう口パクすると、
陸久は私の言葉を声に出して繰り返した。
「なんで私を殺したの?だって」
「殺した...いや、殺したのは俺じゃない」
「お前の姉、梨沙だ」
は...。
声にならない声が口から」零れる。
「俺は手伝っただけ」
「あん時凄かったな〜」
「だってもう死んでるって言ってんのにあいつ、お前のこと滅多刺しにしてたし」
そう言いながらお兄さんは笑う。
なんて人だ。
「よっぽどお前のことが憎かったんだろうな」
そう、私の目の前で言った。
さも私が見えているかのように。
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