2章:∇の証明
第10話「はーい、ここ授業に出るぞー」
数学の教師、国方は最初から何となくいけ好かない女だった。アラフォーで多分結婚して子供もいるのに、何となく「女」だった。別に何歳になっても女でも良いのだけど、それを中学校の授業でやってもらっても、こっちは困るだけだ…
国方は当然の様に宮沢をチヤホヤしていた。そりゃ、真面目で出来の良い生徒と授業するのは楽しいでしょうね。だからといって、どこか二人の世界に入っている感じはいかがなものだろうか? ちょっと質問に手が上がらないと、スグに宮沢をご指名だ。まあ、彼は完璧に答えるのだから文句は言えないのだが…
しかし、ある日に宮沢に授業を代わりにやれと言ったのには驚いた。そして、宮沢が躊躇なく前に出て授業を始めたのにはもっと驚いた…丁度、三角形の合同と相似とかをやっている時で、彼は先生が書いていた条件をもう一回説明していた。途中、国方が、
「先生、この説明をしてはどうでしょう」
とか絡んでいたのも、うっとうしいかった。
最後に、彼は「簡単」な問題を出した。簡単、というのは彼にとってはそうだということなのだろう。三角形の合同の証明で、普通は一辺とその両端の角が等しい時が条件の1つになる。しかし、「一辺と、その端の片方の角と、3つ目の角が等しい時はどうか?」というのが彼の問題だった。
この頃には彼が授業をする事自体の違和感は無くなっていたのだが、問題は誰にも解けなかった。先生の顔を見ると「ほー」という表情。
確かに、言われてみれば三角形の角の合計は180度なのだから、2つの角が同じならば3つとも同じになるはずで、彼の設定でも合同が証明できる。再び生徒の中から「おおー」という軽いどよめきが起こったが、彼はいつもの軽い冗談を言って席に戻っていった。
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