タイミーに応募したら魔王討伐の光バイトだった
@volutax
第1話 単発バイトで異世界転生
「じゃ、今回来てもらったことだし、仕事内容を説明したいところなんだけど」
目の前に立っている全身鎧姿の男の人が私に向かって説明を始める。その横には魔女のような帽子を被った少し厳しそうな桃色の髪の女性、シスターの格好の物静かそうな印象の金髪の女性がいて、私の方を真剣な眼差しで見つめている。
「いや、あの、その前に質問をしても良いですか……?」
おずおずと手を挙げた私に手を差し伸べ、もちろん良いよ!と笑いながら返答をする。いかにも豪放磊落?といった形で、鎧の下からでも良い人さが伝わる。
説明の前に質問をするのもどうなのかな、一応雇用主だしな、と思いながら、しかしこれは解決しないことには何も。
「ここ、どこですか!?」
目の前には紫色の空をバックに、禍々しいお城が鎮座していました。
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そんなに長くしたい話でも無いんですが、少しだけ遡らせてください。
えっと、どこから話せば良いのやら。
私は一般的な女子高生やっているんです。で、進路も決まったし、友達の間でも流行っているからやってみたんですよ、「タイミー」。単発バイトってやつです。
そうしたら未経験可、立派なお城で働けます。しかも給料も良い(一回働いて10万円!)っていうので応募してみました。だってすぐ埋まりそうだし、内容とか見ないじゃないですか。
そしたら即座に来てくださいって連絡が来まして、指示通りの場所に来たら……異世界でした。目の前には勇者御一行でした。
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回想終わり
「魔王城だよ。この世界を支配している悪いやつがいるのさ」
腰の剣が鎧にぶつかり、カチャリと音が鳴る。
「酒場に仲間募集を出したんだけど、どうやら君の世界の募集板にも掲載されていたみたいだね」
呆気に取られた私の様子を見て、続けてそのまま説明をした鎧さん。私のおさげが下に垂れ下がります。
服装も自由って聞いてたから普段のパーカー着てきちゃったし、これで戦うの?私。
「私、普通に山手線乗っていたはずなんですけど……」
電車の中でスマホ弄ってた最中にここに来たのだ。
「多分それはあたしの魔法ね」
魔女帽子を被った方が口を開く。厳しそうな言い方だけど、声がめちゃくちゃかわいらしい。
「ここにすぐに転送されるように魔法かけたから、その効果がそっちの世界にも効果があったわけね」
胸に手を当てて得意げにする。ピンク色の長髪が風になびく。
「で、でも勇者様、魔法使い様。聞くところによりますとこの方戦闘は出来無さそうでございますよ。あっし達で支援できるかどうか……」
シスターさんがびくびくと口を開く。ぜんっぜんキャラに合っていない話し方だなしかし。
「うーん、僧侶の言うことも一理あるが、まあ良いだろう!レベルも俺ら高いし、何とかなる!」
腰に手を当てて、豪快に笑う。
「君も大丈夫だろう!?」
いやあのさっきから私蝙蝠みたいな生き物にビビりまくってるんですけど。断ろうかなこれ、戦闘とかできないし。
「折角なのですが、私にはちょっと荷が……」
「というかやるしかないわよ、あんた」
魔法使いさんが食い気味に話を遮る。もうパクパクです。
「逃さないために、魔王を倒さないと帰れない魔法もかけたから」
「なんですかその闇バイト!!!」
思い切り叫んでしまいました。
「いや、勇者だから光バイトだな!」
うるさい。てか異世界のくせに日本語じゃん。通貨も円だったし。
「やります、やりますよ。何すればいいんですか」
バイトの店長に話す口調としては最悪だ、普通ならこの時点でもう帰っていいよって言われる気がする。バイトしたこと無いけど。
「とりあえず見てれば良いよ。後ろから」
「え、それだけ?ですか?」
「経験値がもったいないし、やっぱり4人じゃないとね」
経験値って概念あるんだ……私に経験値入ったらどうなるんだろう。
「ところで、君の職業は?」
職業、職業?いや、学生なんだろうけど、それを答えるんじゃない気がする。こういう時の言い方って多分あれ。言わなくちゃいけない気がする。
「……タイミー」
「タイミー?聞いたこと無いけど君の世界の戦士みたいなものかな?」
「そうですねー……」
ある意味戦うようなものだけれども。
「よろしくね、タイミーさん」
タイミーに応募したら魔王討伐の光バイトだった @volutax
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