【TS】その硝煙は流れる髪のよう~TS美少女ボディガードが学校を襲撃してきたテロリストからクラスメートを守って、クラスの美少女と一緒にプールにランデブーするまでの散々な一日~【短編】
第3話 彼は孤高ゆえに、優しく。此処ゆえに吠える。
第3話 彼は孤高ゆえに、優しく。此処ゆえに吠える。
痩せた男と巨漢の男。
銃を持った二人の画像を確認しながら。
俺は、自分が思った以上に
更衣室で想像の熊や虎と戦っている内に、外でこんな事が起きていた事に気が付かないとは。
俺はスマホをしまいながら考える。
とりあえず事実だけを確認する。自分の教室がテロリストに占拠され、TSしたクラスメートが人質になっている。
よし、意味が分からん。
だがやる事は分かる。
立花を連れて、さっさと退避するのだ。
後は警察などの法執行機関に任せるのが最適解だ。
俺が立花を連れて退避しようと振り返ると、スマホが小さく振動した。
立花が俺を見て頷いている。
なんだ?と思いながらスマホを取り出すと立花からメッセージが届いていた。
〈どうするの?〉
スマホを触っていた様子のない立花からのメッセージに、一瞬首を傾げそうになるが、すぐに
思考入力用のデバイスは高額なので、普通は高校生が持つような物ではないが。流石、家が超の付く資産家なだけはある。
当然そんな物を持っていない俺はスマホを手で操作する。
それにしても自分の胸が邪魔だ。あと長い髪の毛。
垂れてきた髪の毛を片手で掬い上げ、文字を入力していると、立花からのメッセージがまた飛んできた。
〈可愛い!〉
思わず半眼で立花を見てしまう。
〈違うの!まだコレに慣れてなくて!勝手に入力されて!半眼可愛い!〉
立花が美男子
こんな不愛想な顔の、しかも水色の髪という、人類の遺伝子に喧嘩を売っているような顔の半眼に、どこに可愛い要素があるというのか?
まぁ良い。俺は立花の変わった趣味を無視して文字を入力する。
〈逃げるぞ、静かに移動する〉
〈え?なんで?〉
思わずまじまじと立花の顔を見てしまう。
美男子がキョトンとした顔で首を傾げる。
〈助けないの?〉
〈誰が?〉
〈ガクト君が〉
頭おかしいのかコイツは。
思わず呟きかける言葉を飲み込む。
馬鹿な事を言ってないで逃げるぞ。
俺がそうスマホに入力している最中だった。
教室から甲高い悲鳴が聞こえてきた。
スマホのカメラを起動させ確認する。
女生徒が痩せた男に片手を掴まれ無理やり立たされている、頭に銃を突き付けられながら。
いや違う、男子生徒か。ややこしい。
「貴様! 性別を戻せる物をTSと呼ぶのか!?」
聞こえてきたテロリストの声に、駄目な意味で顔が真顔になる。
「男女キャラクターの精神入れ替わり物や、らんま2分の1、TSという意味ではむしろ元に戻れない不可逆なTSの方が後発だ!」
そう反論したのは――誰だ? 性別が変わっているせいで分からん。
嗚呼、坂本か。
俺は席順からクラスメート思い出して、彼なら頭に銃を突きつけられても反論ぐらいするだろうなと思う。
両親が二人とも漫画家の彼は、古今東西の漫画を読み漁っている生粋のオタクだ。その精神性は孤高でありながら
一つの解釈しか認めないというテロリストとは最も相容れない人物だろう。
尊敬できるが、この場においては愚かしさだ。
俺はテロリストの正体が、TS純化教団である事を知って時間が無い事を悟る。
彼らは不可逆なTSこそが真のTSであるという教義を掲げるカルト集団だ。
TSチョーカーは、外せば元の性別に戻るが、それを許せないとするのが奴らだ。
故に奴らはTSチョーカーを着けたまま死ねば性別が戻らないという、その特性を狙ってテロを起こす事がある。
狂信者がそうであるように、奴らは他人の解釈を認めない。
世界は自分たちの解釈に合わせなければならない、その傲慢さは多様性からは最も遠い。
TSチョーカーの発明者が最も忌避した考え方であろう。
理解とはグラデーションでありマーブルなのだ。
だから歴史に名を残す
「我らの
「あぁ!? てめぇ後発をパクリ呼ばわりとはどういう了見だ!?」
激高したテロリスト以上に坂本が激高する。
臆さぬ精神性は尊敬の対象だが、本当にやめて欲しい。今度から坂本君と呼ぼう。
奴らは聴衆を集めてから犯行に及ぶ、今はそれを待っているに過ぎないのだ。
つまり一人や二人、その順番が入れ替わっても気にしないだろう。
本当に時間が無くなった。
俺は立花に小声でやって欲しい事を伝え、行動を開始した。
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