【TS】その硝煙は流れる髪のよう~TS美少女ボディガードが学校を襲撃してきたテロリストからクラスメートを守って、クラスの美少女と一緒にプールにランデブーするまでの散々な一日~【短編】
第2話 少女は胸にそれを隠し、少年は存在を問う
第2話 少女は胸にそれを隠し、少年は存在を問う
学校の制服は、男女共用のズボンスタイルである。
だがこのTS試験中は服装も男女別となる。
俺は更衣室の鏡の前で、女に変わった自分の姿をマジマジと眺めてしまっていた。
華奢な肩に、細い腕。
卵型の顔に、どことなしに男だった自分の面影が残る不愛想な顔。そして何故か髪の色は透き通るような水色だった。
まさかと思うが、性別どころか人類じゃない何かに変わってないよな?
若干、自分が
あらかじめ配布されていた服装セットを取り出し、説明書を読みながら下着を着け、制服を着る。
慣れないスカートに違和感があるが。
これはこれで良いかもしれない。ハイキックとかやりやすそう。
俺が女の体に慣れようと、シャドーボクシングしたり、想像の熊と格闘しているのを見たクラスメートが変な顔しながら、更衣室を出ていく。
そいつらの中には、TS試験があるのを良い事に、スカート姿で登校した奴がいたので、そんな目で見られるのは大変遺憾である。ちなみに更衣室にいた理由は下着を履き替える為だそうだ。
俺が暫く自分の体の動かし方を把握している内に、更衣室には誰もいなくなっていた。
先程まで妙に外が騒がしがったが、それも収まって久しい。
ゆっくりし過ぎたか。
俺は誰も居ない事を確認し、ブレザーで隠したホルスターに銃を収めた。
*
更衣室の扉を開けたら、俺と同じようにグズグズしていた奴がいたのか。
男子更衣室の扉が同時に開かれた。
大した興味も無かったが、つい視線を向けてしまうと、とんでもない美男子がいた。
身長は180センチ近くあるだろう。
すらりとした長い手足は、細い印象を与えるがしなやかさを感じさせる。
身長が縮んで160センチ程度の俺とは大違いである。羨ましい。
俺に気が付いた美男子が、その整いまくった顔に何故か困ったような笑みを浮かべる。
「もしかしてガクト君?」
美男子は声まで美男子なんだな。
「そうだけど、お前は?」
なぜか美男子が傷ついたような顔をする。
「立花 南です」
「そうか、凄い美男子になってたから分からなかった」
「え? そうかな?」
そして何故か急に照れだした。
良く分からない奴だ。
「俺達が最後みたいだから、さっさと教室に戻ろう」
うへへ、可愛いって言われちゃった、と照れる立花を促して歩き出す。
ちなみに俺が言ったのは美男子だ。可愛いではない。
「それにしても、立花はこんな時間までどうしたんだ?」
俺は自分の事は棚に上げて尋ねる。普段の彼女はグズグズするような人間には見えない。
顔を伏せて立花が言いよどむ。
「下着を履き替える勇気が、なかなか湧かなくて」
「ああ、追加パーツがあるからか」
「追加パーツって……」
立花が変な顔をする。
そして俺は違和感に気がつく。
「いくら何でも静かすぎる」
教室がある階にまで戻ってきたのに静かすぎる。
「授業中だし普通なんじゃ?」
「着替えが終わったらまずは教師からの説明があったはずだ。そして俺はクラスメート及びここの学生どもがその説明を大人しく聞く連中だとは思っていない」
何せ巨乳か貧乳かで争う奴らである。
大人しく教師の話を聞くわけがない。
声を出さずに苦笑する立花に、俺は静かにしろとジェスチャーだけで伝えると。俺達の教室、その隣の教室の扉をそっと開ける。
引き戸に作った隙間から確認した教室は無人だった。
本格的におかしい。
立花が何かを話そうと息を吸った事に気が付いて、その口に人差し指を充てて黙らせる。
背が縮んでいるせいで、高い位置にある美男子立花の顔が何故か赤くなる。
黙るだけで良いのに息でも止めているのか?
成績は学年トップ帯なのに、妙な所で馬鹿なんだな。
立花はちょっと馬鹿、俺は心の人物評に書き足しながら、ジェスチャーで身を低くするように伝える。
立花は何か言いたげな顔をしたが、大人しく従ってくれる。
大変助かる。
こういう時に勝手に動く素人ほど困るものはない。
俺は身を低くして自分たちの教室へと近づいていく。手前から二つ目の教室なので、移動距離が少なくて助かる。
小柄なのはこういう時はメリットだな。
大きくなった立花は逆に四つん這いに近い体勢だ。
俺はあらゆる操作で音が鳴らない海外製のスマホを教室の窓に近づける。先程の教室と違い、明らかに人の気配を感じたからだ。
インカメラが捉えた教室の内部。
それを確認した俺は顔を顰めた。
銃を持った男が二人。
スマホの画面を見た立花が息を飲んだのが分かった。
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