第6話

パッと目が覚め、勢いよく起き上がると、ベッドの上だった。俺は、確か……そうだ、竜人になり、盗賊団2人を倒したがそのまま滝壺に落ちて、そこで意識を失ったはず。死を覚悟したのに、生きている。


ここは、何処だろう?それに、ルルはどうなったのかも気になる。そして、気づいたように自分の姿をわかる範囲、腕など確認すると、おそらく竜人からレックス、人間に戻っていた。

あれは、何だったんだろう?そんなこと思いながら、辺りを見渡すも、何もなく自分が寝ているベッドしかなかった。

ドアがあったため、この部屋から出ようと、ベッドから起きようとしたが、身体中が痛み起き上がることが出来なかった。

仕方なく大声で「誰かいませんか」と叫ぶ。すると、コツコツと足音が聞こえてきた。ドアの方を見て、身構えていると、黒い塊が勢いよく飛んできた。身体に少し痛みが走ったが、我慢し、飛んできたものを見ると、ルルだった。

ルルは、甘えるように俺のお腹に擦り寄っている。

それを見ながら、頭を撫で、「生きててよかった、最後じゃなかったでしょ」というと、ガァウ!と鳴いてにっこりと笑っていた。家族ってこういう関係なんだろうかと思っていると、ゴホン!とドアの方から咳払いが聞こえた。

目を向けると、白いローブを身に纏った、金髪で背が高く、そして顔立ちが整った男性が立っていた。

男性は、「感動の再会の途中悪いけど、お話しいいかな?」と言ってきた。

俺は、「こちらこそ気づかなくてすいません。あなたが僕達を助けてくれたんですよね?」とベッド上でお辞儀をし、答えた。「まぁ、そうだね」と軽く男は返す。「ありがとうございました。俺は、レックス、こいつが、ルルです。」と自己紹介をした。

「ご丁寧にどうも、俺は、カソラス。調査でこんな田舎まで足を運んできたんだが……」とルルの方をチラッと見る。

俺は、ガイアに言われた事を思い出し、咄嗟にルルを庇おうとする。

カソラスは、「あいつらみたいに取りゃしないよ」、「ただ、あんなもの見せられちゃうとね」と笑みを浮かべて言ってきた。

「あんなものって?」俺は本当に分からなかったので素直に聞くと、「覚えてないの?昨日の、竜人になって暴れてたじゃない」、「凄い魔力を感じてきてみたら、あんなことになっててびっくりしたよ」と大袈裟に手でポーズを取る。

竜人になったのは、夢じゃなかったんだ。そう思っていると、ふざけて話していた雰囲気とは逆に、一転して真面目に、レックスを見つめ、「君達、行くあてあるの?」と聞いてきた。

「ないですけど……」と答えると、「昨日のあの魔力、調査も入ると思うし、遅かれ早かれ目をつけられると思うよ。昨日は、なんとかなったけど次は、そういかないかもしれない。」

確かにそうだ、でもどうしたらいいのか、俺には力もないし、人脈もない、何も言い返せず俯いていると、「一つ、提案していいかな、嫌だったら断ってもらってもいいけど」と言い、「レックス、アステネリア王立学校に行かない?歳15でしょ」

俺は、あまりの一言に開いた口が塞がらなかった。


数秒後、カソラスが「おーい、聞いてるー?」と声をかけ目の前で、手を振りようやく正気に戻れた。「アステネリア王立学校って、局員を目指すエリートたちが通う学校ですよね?」

「そうだよー」といつのまにか、ルルを抱っこしており遊びながら、軽くカソラスは答える。

「無理に決まってるじゃないですか、俺、才能もないし、頭も良くないし、強いわけでもないし、それにそもそも入学テストに受かるはずないですよ。」そう、言い切ると、「そこは、大丈夫」とローブの内側から封筒を一枚取り出した。

「こいつは、推薦状だ。これがあれば、テスト免除で入学することができる。」そういい、封筒をヒラヒラとさせる。

そんなことある訳ないと、思っていると、カソラスが「そんな事をある訳ないと思っているだろ?」と聞いてきた。

黙ってうなづくと、「それがあるんだなー」と答える。「あなた誰なんですか?」と訝しげに聞くと、「俺、魔法局員」とあっさりと答える。その言葉に、目を見張っていると、抱いているルルに視線を落とし、「調査で来たって言っただろ、それがこれ」と言った。そして、「キメラの存在は、知れ渡っていると思う。昨日の大魔力のおかけで、キメラの目撃情報とも近かったし」

「俺らも、近くでキメラを見張れるし、お前らも、学校にいれば色んな人たちが守ってくれる。悪くない話だろ。」それを聞き、俺は黙って考える。

そして、「本当にルルは安全なんですか?」と聞くと、「絶対でないないけど、今よりは幾分も」とカソラスは答える。

俺は「じゃあ、お世話になります。」と頭を下げて答えた。正直この話を聞いた時から、答えは決まっていた。ただ、本当にカソラスを信用していいのか迷い即答出来なかった。今の段階では、分からないが、嘘はついていなさそうだったので、提案に乗ることにした。それにしても、本当にあのエリートと言われる魔法局員なのか、目の前にいるのは、ただの男前で軽い兄ちゃんって感じの人で、全然すごくは見えないが……。あ、構いすぎてルルに引っ掻かれている。本当に、信じて大丈夫な人なのか、決断した直後から不安に駆られた。

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