渡辺-猫の話
この雰囲気で始めるの嫌だなぁ。
コメントしづらいし暗いし触れても触れなくても角が立ちそうなので、まあ、かわいそうにというのと、告発ならこの場じゃなくSNSにでも投げておいた方がマシじゃないかなとだけ言っておくよ。
というわけで、少し気分を変えるために短くてほんのり怖い話でもしようかな。
四年の渡辺、猫の話。
みんな猫又って知ってるかな。長生きした猫は尻尾が二つある化け猫になるって話。尻尾が裂けるのが有名だけど、私が聞いたのだと根元にこぶみたいなのができてそれが二本目になるってやつだったんだよねえ。ググっても出てこないし、誰に聞いたかも思い出せないけど。
それで、猫又が出るって神社が学校の近くにあって、JKのころはよく仲間内で行ったわけよ。もともと猫又じゃない猫もたくさんいたし、どっちかっていうと猫構うついでに変なのおらんかねーって感じだったな。
その日は他のメンツと予定が合わなくてソロで行ったんだけど、いつもは結構いる猫たちがいない。まあ小雨も降ってたから避難してるのかなぁと一応神社来たし参拝だけして帰ろうと思ったんだけどね、賽銭箱の上にでかいのが一匹いたのよ。
普段は見かけないサイズで、学校のかばんぐらいにはでかい。丸々と太った白黒の猫。撫でても抵抗もしないから思う存分もふりちらかしたらね、ある一点を触ろうとするとシャーっと鳴く。威嚇の音ね、これ。
で、そこが件の尻尾の根本。なんかいぼかしこりかなんかみたいな感じだった。うわー!マジじゃん!ニア猫又じゃん!ってテンション上がってそれから毎日通ったのよ。猫又になるの見たいから。
でも不思議なことに、私が一人のときじゃないと出てこない。会うたびに伸びてる。いぼとは言えないぐらいに伸びてきてからは触らせてくれるようになったから、もともとの尻尾と長さ比べとかしてたわけ。
もうほとんど同じぐらいまで二本目が伸びてきたあたりかな。
いつものように撫でてたらそいつが顔上げて、こっち見上げてくるの。ずっとされるがままにされてたんだけど、急にこっち見て。
にたぁ、って笑ったの。
猫じゃないみたいに、口開けて、歯も、猫の牙みたいなやつじゃなく、平らな大きい歯で。
思わず手ひっこめたら、ほんとに、ずっと賽銭箱の上から動かないようなやつだったのに、降りて迫ってくるの。カチカチって歯を鳴らしながら、その間に、人みたいな笑い声が聞こえた。猫の鳴き声と赤ちゃんの泣き声とかじゃなく、すごい、嘲笑うみたいな笑い声。
怖くなって逃げだして、その日からしばらくその神社に近寄らなくて、それから数か月後、卒業って時に友だちと一緒に恐る恐る見に行ったけど、いなかった。一人で行ってもいなかった。
猫又のなり方、他にもあってね。
飼い主を食べてそれになり替わるってのもあるんだって。
私、もしかして飼い主認定されてたのかな。
そう思うと少し怖いよね。
以上!次の人どーぞ!
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