第8話

チビ達を置いては行けない。



でも出ないわけにもいかない。



あたしは滲んだ涙を拭いて、二人の頭を撫でる。




「ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから」



「ふぁぁぁっっっ」



「うわぁぁぁん‼」




あたしの言葉に二人は火がついたようにまた泣き出した。





あああああ・・・・・。






「すぐだよ。すぐ戻ってくるから」





後ろ髪引かれながら、あたしは寝室から出た。




これで新聞の勧誘とかだったら、ブチ切れてやる。




険しい顔で玄関に向かってたら、もう一度チャイムがなった。





「はいっっ‼」




自然返事が怒り口調になる。




焦ってたあたしは、誰かも確認せずに玄関の扉を開けてしまった。




八雲さんに.アレだけ言われてたのに。













「遅い」



「な・・・」




開けた瞬間に言われた言葉。




それどころじゃなかったんだ、とカチンときて顔を上げれば、少し不機嫌な麻也が居た。




ここ2年でグンと背が伸びて、見上げなければいけなくなった。




美少女と呼ばれてた顔も凛々しくなり、美青年へと。





「ま・・・麻也??」



「何が麻也?だ。居るなら早く出なよ」



「あたっ‼」




ズビシッと頭にチョップをくらう。




何故に‼?



あまりの理不尽さに反撃を試みるも




「「うわぁぁぁんっっ‼」」



「「‼??」」




チビ達の泣き声が玄関まで届いてきた。




「八千流‼ハイド‼」




ぺーいっとあたしを押し退けて麻也が寝室へとダッシュ。




「あっっちょっ・・」




早い‼

早いよ、麻也‼



母たるあたしが出遅れるほどに。




更に焦り部屋に戻ろうとするあたしに優しい優しい声がかかる。













「チビネ」

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