第3話 通い妻
翌日。
懲りずに
「家政婦を雇った記憶はなんだが?」
「通い妻ならいいかしら?」
「いいわけないだろ!」
「お邪魔するわね」
「おい!」
ずかずかと家に上がり込んでくる。
拒否権はないらしい。
「またオムライスか?」
「いやなら食べなくていいのよ?」
ケチャップで「願」と書かれたオムライスが提供される。
星にでも願っているんだな。そういうことにしよう。
「なんで俺なんだよ。他にもいるだろ」
「いいえ、あなた以外いないわ」
オムライスを食しながら会話を続ける。
「あなたは業界でも有名なハッカーだもの」
「なんでそんなこと……」
「知ってるわよ。私は西城グループの社長令嬢なのだから」
「はぁ⁉ 西城グループ!?」
西城グループは数々の事業を手かげている大企業。
俺が契約している企業、西城システムズはそのグループの一角だ。
そこから俺はとあるシステム開発の依頼を受けている。
だからか。俺のことを知っていてもおかしくはない。
「驚いたわ。同じ高校生とは思えない。しかも、それも、年下だもの」
「そりゃどうも」
「同じ高校に通ってるだなんて。これ以上の適任がいるかしら?」
「なんか手頃だから声を掛けたように聞こえるんだが⁉」
「そうとってもらって構わないわ」
「そうとしか思えないぞ」
「どう? その気なってくれた?」
「その気になる要素あったか?」
「……ないわね」
「認めちゃったよ」
「仕返ししたいとは思わないの?」
「思わない」
「どうして? 彼女を奪われたのよ?」
「そんなことしたって
「
「なんだ? 空想の話か?」
「詐欺ってことよ」
「詐欺だ?」
「ええ、あなたは騙す方と、騙される方、どちらが悪いと思う?」
「……騙す方かな。騙す奴がいなければ騙される奴は存在しないからな。元を絶てば消える」
「なら
「なんでそうなる」
「
「それとこれとは話が違うだろ」
「同じよ」
だが、どうあっても俺にやらせたいという想いは感じる。
それなら俺にだって考えがある。
「仕事としてなら引き受けてやってもいい」
「あなたには良心というものがないのかしら?」
「ない。一人暮らしを始めたばかりで金が必要なんだ。時間を無駄にしたくない」
「無駄って……お金が発生しなければ時間の無駄みたいな言い方」
「無駄だろ?」
間違ったことは言ってないはずだが
「いくらなら引き受けてくれるのかしら?」
せっかくだから多めにしたいところだな。
「そうだな……100万くれるならやってやってもいい」
「100万!?」
「当然だろ、なにをやるのかも、いつまでかも聞かされてないしな」
「やることはあなたなら簡単なはずよ」
「というと?」
「防犯カメラにハッキングして、
「なんのためにそんなこと」
「悪事を働いていても証拠がないと裁くことはできないのよ。バレなきゃ犯罪にはならないってよく言うでしょ?」
「なにもなければ?」
「なにかあることを祈るわ。変な話だけど。ちなみに、なにもなければ報酬もなしね」
「なんでだよ」
「結果報酬型ってことで。仕事とはそういうものよ。特にフリーなら尚更ね。お金のことはパパに頼んでおくわ」
引き受ける流れになってしまった。
だがまぁ、お金がもらえるならいいか。
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