第14話 後宮に女官がやって来た
__翌日。
夜になれば、ゲオルグ様が来ると思い、お迎えの準備をして待っていた。しかし、ゲオルグ様は来ない。
「おかしいわね……今夜は来ないのかしら?」
でも、今夜からはここで寝ると言っていた気がする。落ち着きなくうろうろと部屋を歩き回り、何時間もゲオルグ様を待っていた。疲れてベッドに身体を投げると、柔らかいベッドが眠気を誘った。
朝目覚めれば、外から話し声が聞こえてきて薄っすら開いた目をカッと開いた。
何だろうと思いながら身体を起こした。ルキアは人の気配を感じてベッドの隅に隠れている。
「……遅くまで起きているから、起きるのが遅くなってしまったわね。ルキアはどうしたの? お腹が空いたのかしら?」
「くるぅぅ……」
「騒がしいわね……また、リヒャルト様かしら?」
騒がしい声が部屋の外から聞こえて、おそるおそる部屋の扉を開けると、多くの女性たちが騒いでいた。
「私の部屋はこちらを使うわ!」
「本当に立派な後宮ね!!」
などと、女性たちが言い合っていた。
「ルキア。どなたかしら? リヒャルト様じゃないわ。ルキア?」
返事がなくて、振り向くとルキアはすでに隠れていなくなっていた。
「また、逃げたわね……」
薄情者だと思う。すると、女性たちが私に気づいた。
「ミュリエル様! おはようございます!!」
突然の大きな声に驚いた。
「あの……どちら様でしょうか? リヒャルト様の使いですか?」
「まぁ! やっぱり、陛下がこちらに通うのですね!」
リヒャルト様の名前に反応を示した彼女たちの声がいちいち声が大きくて、圧に押されそうだった。
「ミュリエル様。陛下は、どちらでしょうか?」
「ゲオルグ様ですか?」
「はい。すぐに陛下にご挨拶を申し上げないと」
「ゲオルグ様でしたら昨夜は来られなかったので……」
「まあ、ではいつ頃お渡りに来られますか?」
「お聞きしてないので、何とも言えませんが……」
また、来ると言うようなことは言っていた。だから、昨夜は準備して待っていたけど、ゲオルグ様は昨夜は来られなかった。そのせいで、遅くまで待っていて寝坊したのだけど……。
「やっぱり、違うんじゃない?」
「おかしいわね……陛下が会いに来たと噂になっていたのに……」
ひそひそと話す声も大きくて困ってしまう。すると、一斉に私の方を振り向いて驚いた。
「ミュリエル様」
「はい」
「本日から、後宮の女官兼こちらで住まわせていただくことになりました。ティレット公爵令嬢でありますレスリーと申します」
「は、はい。よろしくお願いいたします」
ちらりとレスリー様の周りにいる女性たちを見ると、レスリー様を筆頭に皆が後宮の女官だと言い次々に自己紹介していく。
「ミュリエル様!」
「アニータ……あの……こちらは……」
アニータが慌ててやって来た。アニータも令嬢たちに圧倒されている。
「そ、それが……昨日、ミュリエル様のお言葉通り女官長に後宮の使用人をお願いしましたら……」
「たくさん来たのね」
「に、人数は抑えられていると思うんですけどっ……」
アニータと二人で寄り添って令嬢たちを見ると、ドレスをばっちり決めた令嬢たちがニコニコ笑顔で私を見ている。
「と、とりあえず、女官の問題は解消かしら?」
「そ、そうですね」
「じゃあ、アニータは仕事を教えてあげてください」
「わ、私が、ですか!?」
「アニータが一番後宮の仕事に詳しいので……」
「わ、わかりましたっ……でも、先にミュリエル様のお仕度と食事にしましょう」
そう言えば、昨夜ゲオルグ様をお迎えしようとしたシュミーズドレスのままで今もいる。
「はい。ありがとうございます。アニータ。洗濯は後で持っていきますね」
「はい。では、すぐにお食事をお持ちします」
そう言って、アニータが食事の準備に取り掛かり始めた。
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