第7話
キーワードが発表され、ベルティーナとロレッタがうるうるし、それを他の連中が温かく見守って、とりあえずゲームは終了だ。
あとは、ご褒美の授与だな。
「さぁ、人魚の試練を見事突破したよい子たちには~、素敵なプレゼントがありま~す☆」
「「「あちらを見ろ~☆」」」
人魚が指し示す先には、ミリィが頑張って飾ってくれたクリスマスツリーが立っていて、その足元にうず高くプレゼントが積み上げられていた。
わぉ、クリスマスっぽい。
「ちゃんと名前が書いてありますから、自分の物を持っていってくださいね~」
「でもみんな、その前に体をしっかり拭いておかないと、せっかくのプレゼントが濡れてしまうよ」
ジネットとエステラが、プレゼントに群がるガキどもを誘導していく。
デリアにイメルダ、ノーマにナタリアにギルベルタ。ガキの扱いのうまい連中が暴走しそうなガキどもをうまく捌いている。
濡れた髪や手をしっかり拭いてやらないと、風邪引くからな。
「なかなか楽しいものであったな」
「おぉ、戦力外のルシア」
「誰が戦力外だ!? 率先して手伝おうとしたら、『なんか顔つきがヤバい』と除外されただけだ!」
なお悪いじゃねぇか。
ハビエル枠じゃん、お前。
そのハビエルは、飯の時間まで甲板への立ち入りを禁じられている。
はしゃぎ過ぎるのが目に見えてるからな。
「しかし、最後に少し使うためだけに甲板に巨大なプールを作るとは……貴様の子供好きは留まるところを知らぬな」
「言ってる意味はよく分からんが、このプールはゲームのためだけに用意したんじゃないぞ」
「なに? まだ何かあるのか?」
「ふっふっふっ……サリサ!」
「はいは~い! 海漁ギルド二足歩行クルー代表、サリサです! ご注文の熱湯をお持ちしました!」
「よし、プールへ投入!」
「は~い! どぼどぼどぼ~!」
巨大なプールに熱湯を注ぐと、たちまち湯気が立ち上り、プールは屋外大浴場へと変貌した。
船上の露天風呂だ!
「うん、湯加減もバッチリだ。みんな水着着てるから、好きに入っちまえ!」
「それでボクたちにまで水着を着せたのかい?」
「あっ、だから今日はお酒をいっぱい持ち込んだんでしょ? ノーマがお風呂で飲むお酒は格別だって言ってたし」
「やったさねぇ! さすがヤシロ、分かってるさねぇ~!」
パウラからの情報を聞き、顔が濡れると泣くかもしれないからとプールには一切近付かなかったノーマが、我先に露天風呂に飛び込んできた。
風呂だと平気なんだなぁ、なんでか。
「よぉ~し、そういうことならワシも入るぞ! パウラの嬢ちゃん、金はワシが出す、じゃんじゃん酒を持ってきてくれ!」
「はいは~い! ネフェリー、手伝って~」
「うん。あ、でも私たちもあとでお風呂入ろうね」
「もち!」
パウラとネフェリーが厨房へ駆け込み、交代するようにマグダやカンパニュラたちが厨房から料理を持って出てくる。
「ジネット姉様、お料理はどちらに運びますか?」
「では、こちらのテーブルにお願いします」
「みりぃも、お手伝いする、ね」
とことこ駆けていくミリィだったが、デリアが「これでもか!」っと料理を大量に抱えて運び出してきてちょっと足を止める。
「……まだ、ぉ料理、残ってる?」
「ん? もうほとんどないぞ」
「はぅ……出遅れちゃった……」
まぁ、そうがっかりするな。
真っ赤なワンピース水着のミリィは、いてくれるだけで盛り上がるから。
「で、そこの『黙っとったらおらへんのと同じやん』理論を振りかざしてるレジーナ」
「なんや、バレとったんかいな」
バレるというか、めっちゃ目に入ってから。『ウチ、おらへんで~』みたいな空気必死に醸し出してたけども。
「ところで、ウチの水着に描かれとるこの茶色い動物はなんなん?」
レジーナのビキニには、トナカイが描かれている。
真っ赤なお鼻が、ちょ~どお胸の天辺にくる素敵デザインだ☆
「トナカイという生き物でな、その赤い鼻が特徴なんだ」
思わずぷしっと押してしまいたくなるほどに☆
「ん。とりあえず、シスターはんの隣におろっと」
ちぃ!
一番ふざけられない安全地帯に逃げ込みやがって!
「では、みなさんでお食事にしましょう!」
ジネットの宣言で、一同はクリスマス料理へと群がった。
正直、ずっといい匂い嗅がされてとっくに腹ペコだったんだよな。
言うまでもないだろうが、真っ先に料理へ到達したのは、ベルティーナだった。
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