SNS投稿許可試験

湾野薄暗

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「資格の欄にSNS投稿許可証が添付されてないですがSNS投稿許可試験には合格されてますか?」

そう目の前の面接官は言った。

俺は「それなら最初からSNS投稿許可証がいるって書いとけ!」と目の前の面接官に怒鳴りつけた。


インターネットがみんなのものだったのは今や昔の話。

悪質なデマ、フェイクニュースや誹謗中傷による自殺などのSNS犯罪が増える中で政府が打ち出したのは『SNS投稿許可試験』だった。


SNS投稿許可試験に合格するとSNS投稿許可証が国から発行されて、それをスマートフォンで読み取って個人が特定できる状態にしないとあらゆるSNSや掲示板への書き込みが制限されるといったものだった。

スマートフォンもSNS投稿許可証を読み取り式の物しか販売されないようになり、すでに個人情報と紐付けてある高額な脱法スマートフォンも闇市場で販売されるようになったり…と混乱はあった。

その混乱も法整備と共に少しずつ収まっていった。


そして最初は実況者などがネタとして受験して

「合格しましたー!」とあげるだけの動画が100万再生を記録するなど少しずつ浸透していった結果、民間企業で「SNS投稿許可証を持ってるということはネットリテラシーもあり、少なくとも問題のない人物なのではないか?」という世論一色に染まってしまい、SNS投稿許可証を持ってない人間は面接を落とされる事案が発生していた。

そしてSNS投稿許可証は身分証明書にもなった。


俺は面接の帰りにスーパーに貼り出されている憎らしいSNS投稿認可試験のポスターを見た。

昔、誹謗中傷されていたアイドルのニイナがみんなも受験しよう!と促しているダサいポスターだった。

募集要項、16歳以上で過去にSNS犯罪を犯してない者、受験料2000円、SNS投稿許可証代1000円…と読み進めるうちに段々と腹が立ってきて、それ以降は読まずにスーパーに入る。


俺は悪くない。

そう思いながらスーパーのラックに置かれている

無料の求人情報誌を手に取る。

表紙には、これまた特集に「SNS投稿許可証を活かせるお仕事」や「SNS投稿許可証が要らないお仕事」と書いてあり、顰めっ面になった。

俺は悪くない。


スーパーで何も買わずに出て、家へ帰っていると

SNS投稿認可試験の大きい会場があり、

苛立ちが隠せなくなってきた。

会場の方を睨んでいると

「すみません、少しお時間いいですか?」と警備中の警察官に話しかけられた。

睨みつけながら「なんですか」と聞くと、

いわゆる職質だった。


「お兄さん、身分証明書を見せてください。運転免許証とか。SNS投稿許可証とか」と言われた瞬間に爆発した。

「どいつもこいつもSNS投稿許可証ばっかり言いやがって!」と警察官に掴みかかった瞬間に取り押さえられて、少しすると応援の警察官がやってきた。


「お兄さん、鞄の中を見せてください」と言われたので

「勝手に見ればいいだろうが!!」などと怒鳴っていると野次馬が集まってきた。

俺は悪くないのに野次馬まできやがって。


「身分証明書はないんですけど履歴書があります」と取り押さえられてる背後から声がする。いい加減離せよ。

背後の警察官のやりとりが。

「あー…SNS犯罪の前科有りでSNS投稿許可証を取り上げられてますね…」

「あぁ…」と憐れんだような声を出してて更に腹が立った。

俺は悪くないのに。


「悪いのは返事をしなかったニイナだろうが…!」とわぁわぁと叫んでいると俺はパトカーに乗せられて警察署に連れて行かれた。

俺は悪くないのに。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「試験終わったよー!」と試験会場から一目散に出てきたら野次馬がいて辺りはごった返していた。


無事に友人と落ち合い「混んでるけど何があった?」と聞くと

「何かSNS犯罪の前科がある人が暴れてたよ。ニイナが悪いとか言ってたから多分、アイドルのニイナへの誹謗中傷の事件の犯人の中の一人じゃない?」とどうでも良さそうに答える。


「SNS犯罪の前科あると試験が受けれないもんね…昔は再び受けれたけど累犯多いし…」と言いながら友人のスマホを隣から覗き込むとSNSへ投稿していた。


合格していたら親からスマホを買ってもらえるので

「合格していて欲しい〜!」とわいわいしながら

友人と試験会場を後にした。

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