林実咲内閣総理大臣拝命
ここで時系列は少し飛んで1936年の晩秋の事・・・・・・そういう空気もなかったのに突如として衆議院解散を断行した高橋首相と与党国社党は世間からのバッシングを浴び(なお、首相自身がこれを仕組んだ面もある)、その中でその世論の支持を集めた実咲の率いる扶民党が単独過半数を獲得、議会での投票の結果実咲が首班指名され、正式に組閣の大命がくだって林実咲政権が始まる事となった。まず実咲が力を入れたのは困窮する地方農村などへの支援策、次いで国家機関や工業地の分散、工業煤煙や排水などに厳しい検査基準を設ける、それが基準に達しなくてもそこで働く労働者の生活は守るために支援を行うといった施策などを矢継ぎ早に行い、林内閣、林実咲の名は全国各地の国民に熱狂的に受け入れられつつあった。
「それにしても、伊澄さんも大胆な事やってくれましたね」
「実咲ちゃんの事だから私の事を下手に擁護とかしちゃうかもとは心配したけど、菜生ちゃんもいるしその心配はなかったね」
「というかどうも擁護しようがないでしょ。で、国民の生活に関わる経済政策を前面に押し出して、この間に準備を進めていきます」
「・・・実咲ちゃんの予測だといつ?」
「各国の外交、軍備計画を精査したところ再来年の10月には始まります」
「前世より早いね・・・」
「まあこの世界は前世ほど欧州も平和主義が浸透してないようですからね。で、起きるとしたらやはり欧州から、英仏海峡から北海で何か起きるのが一番可能性が高いと思います」
「なら日本はまたイギリスに巻き込まれて?」
「いえ、そうはさせません。ですが、戦争への参加自体は避けられないでしょうね、ドイツは我が国に対しては動かないと思いますが、米仏は別です。特にアメリカはこの間太平洋艦隊をサンジェゴからハワイオアフ島に動かして、これは明らかに我が国を意識したもの。初戦の想定海域は小笠原沖、想定時期は同じく1938年10月前後」
「・・・海軍は勝てる?」
「我々以外の転生組の働きもあって艦艇乗員の練度、電探や射撃管制の技術ともに現在我が国は米国の一歩先を行っていると思いますが、だからといって人と人との勝負に絶対はありません。ただ、確実なのは・・・・・・」
「・・・・・・つっても日露戦争でも旅順閉塞は失敗して結局陸上からの攻略だったし、オアフ島真珠港の水深はたった12mでしょ、でかいコロラド型戦艦なんかすぐに引き揚げ・・・・・・あ、まさか実咲ちゃん!」
「そうです、米太平洋艦隊を艦隊ごと手中に収め、太平洋の天元を我々が抑える。いい考えでしょう」
「でも補給は・・・」
「もちろん、その辺もきちんと根回ししてありますから」
「・・・さっきドイツは動かないって言ってたけどまさか?」
「ええ、公表はされてませんがミュンヘンとロンドン、モスクワ、南京の間での交渉がまとまり、日英独華露の新たな経済軍事同盟が既に合意済、オランダに関してはこちら寄りでの中立を確認済です。オーストラリアもむろん英本国に追随します。ですから必然、米仏は太平洋に閉じ込められる、そして我が日本海軍はその太平洋からすらも米艦隊を大陸本土に押し戻す」
「それを、再来年10月開戦として本当にできるの?」
「それだけの戦力は用意できます。しかし、この計画を発動せずに済むならそれが一番ですがね」
「それはそうだけどね・・・」
ただこの時、実咲は既にこの世界の歴史の流れにその望みはないと分かっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます