始点
かつて日本が植民地化した朝鮮半島の独立に向けた協議のため、その首都漢城にある朝鮮民政府の代表朴鐡气と会談する衆議院議員林実咲と砂緒菜生。その会談の冒頭、朴が放った一言に2人の議員は衝撃を受ける。
「多くの朝鮮民族は真に独立など望んでいません」
その言葉は青天の霹靂であった。日本本国において報道などで聞こえてくる朝鮮の情報は、大半の朝鮮民族と呼ばれる現地人達は日本からの完全な独立を望んでいる・・・と。実際、新聞には独立運動のデモで何万人もの群衆がこの漢城や仁川や平壌など各地で集まって日の丸をおろせ!と叫んでいるなどというもので、実咲も菜生もそもそも朝鮮を国として独立させる前提で来ているのである。多くの朝鮮人は独立を夢見ているはずだと、そう思っていたのだが、朴はそれを違うと言う。
混乱する2人を置いて、朴は更に話を続ける。
「確かに独立運動自体は存在します。ですが現状、こうして自治権も与えられ、それが独立して日本の助けなくやっていけるのかと多くはその現実を見ております」
「我が国としては独立後も朝鮮を同盟国として支援を・・・それに帝国政府は民間企業にも働きかけ、現在ある日系権益、整備されたインフラなどはそのまま貴国に譲渡される予定ですから、独立直後の経済的不安の心配は・・・・・・」
「砂緒先生、自分で言ってて分かりませんか?その状況、日本の多大な支援を受けて・・・という状況は現状と何も変わらないんですよ」
「あっ・・・しかし我が国としてはそれで構わない、先程の話は国内の世論も納得していますから、あなた方には独立してもらいたい」
「・・・併合する際も独立させる時も、あなた方日本人は・・・・・・分かりました、そういう事でしたらしっかり搾り取らせていただきます」
その後、独立後の日系住民、日本国内の朝鮮民族の国籍問題や海上になる国境線の問題などを協議して、実咲と菜生が帰朝して総理に報告して閣議でまとめられ、この年のクリスマス前には「帝国自治領朝鮮半島の完全独立の旨」と「朝鮮王家復古」の勅令が早くも発せられる事となった。その勅令の中で独立日は1938年8月29日とされ、その新たな国の国号は未定とされていた。
1935年12月
先月に朝鮮独立協議を終え帰国、高橋総理に報告書をあげた実咲はその後、東京に出てきていた元上官と会っていた。
「世界中の情報網をあらったが、今のとこそういった論文の情報はないな」
「そうですか・・・すみませんお手間取らせて」
「いや、今んとこそんな忙しくねえからな。それで、その核兵器ってのはそんなにすごいもんなのか?」
「すごいなんてもんじゃないですよ・・・それが炸裂する時直下にいれば骨も残らず即死ですが、そうして何も分からず死んだ方がマシと思えるくらいの・・・・・・」
「・・・・・・最悪の非人道的兵器だなそれは」
「まあそもそも弓にしろ銃にしろ人を殺すために作られた兵器というものに人道的もクソもないですがね。一発で苦しまずに死なせるのが目的でそれを人道的と言うなら、私の言う核兵器なんか最高に人道的ですよ」
「・・・反論が思いつかないって事はそういう事だろうな。しかし我々人類種のナワバリ争いは本能的なものだろ、より穏和だったとされるネアンデルタール人は結局、我々ホモサピエンスに絶滅させられた。戦って戦って強いものが生き残る・・・そうして淘汰されて、今またその人類種淘汰のための争いが始まろうとしている・・・・・・実咲、お前はそれを止める術は最早ないと分かってるんだな」
「・・・・・・ええ、千寿は止めるでしょうが私は、この世界でもその業を背負う覚悟は既にできています」
そう言って瞳を濁らせる実咲に、何か言おうとして踏みとどまってしまう山村康二海軍大佐。そして、実咲の思い描く、彼女の業への道はすぐそこに始まろうとしていた。
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