第六章:崩壊点

 ある日、ぴのこは仕事から帰ると、がらどんどんに呼び止められた。


「ぴのこさん、おかしいでしょ。なんでこれしか書けてないの!?これじゃうち息も出来ないよ!」


 がらどんどんは、ぴのこが書いた小説を手に取り、力強く言い放った。彼女の目には明らかな不満と焦りが浮かんでいた。


「こんなペースじゃダメだよ!もっと書かないと!あなたの才能なら出来るでしょ!?」


 ぴのこは一瞬言葉を失った。自分のペースで書いているつもりだったが、彼女にとってはそれでは足りないのだと言う。がらどんどんは確かに自分のことを応援してくれている。しかし、最近ではその「応援」が次第にプレッシャーに変わっていることにぴのこは気づき始めていた。


「ごめん、ちょっと、ネタを考えて書いてくるよ。」


 ぴのこは部屋を出て、一人で考えながら書く時間を作った。仕事で頭は疲れていたが、がらどんどんの言葉には応えなければいけない気がする。しかし「もっと書け」「もっと頑張れ」と言われるたび、ぴのこは自分の限界を試されているような気がしてきた。


 実家の束縛から逃げるために選んだこの生活が、次第にまた自分を苦しめるものに変わってきていた。がらどんどんの優しさは、優しさと言ってよいものなのか?少しづつ自分の中で不安が大きくなっていた。

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