第四章:転換点
「ぴのこさん、実家にいるのめっちゃしんどいんやろ?やったら、うちんところに来たらええやん」
「……え?」
「ほら、うち、一人暮らしやし、一人増えても全然大丈夫やで。ご両親のことで執筆が滞るのは、ウチいややし。」
ぴのこは驚き、思わず言葉を失った。いきなりそんなことを言われても、どう反応すべきかがわからなかった。しばらく黙っていたが、がらどんどんはさらに続けた。
「うち、ぴのこさんの小説読んでると、めっちゃ力が湧いてくるんよ。それだけで十分一緒に住む理由になるやろ?」
その言葉は、何よりもぴのこの心に響いた。ぴのこが今まで聞いたことのない、優しさに満ちた言葉だった。彼女は、ぴのこがどんな自分でも受け入れるつもりでいてくれる。その安心感が、ぴのこの胸に広がった。
しばらくの間、ぴのこは黙って考え込んだ。自分にとって、実家での生活はもはや息苦しく、毎日が不安でいっぱいだった。家を出ることを考えたこともあったが、現実的な問題が立ちはだかっていた。しかし、がらどんどんが言うように、もしもこの機会を逃すと、二度とこんなチャンスは来ないかもしれない。自分の気持ちがやっと整理できたとき、ぴのこは静かに答えた。
「うん……ありがとう。少しだけ、考えさせて。」
がらどんどんは頷き、明るく微笑んだ。
「ゆっくりでええよ。無理せんで、考えてみ。」
その後、ぴのこは何度もその申し出について考えた。がらどんどんと暮らすことで、今の自分の悩みや恐れが解消されるのではないかと感じる一方で、実家を出ることに対する恐れもあった。けれども、がらどんどんが見せてくれた安心感と優しさが、ぴのこの背中を押す力となった。
数日後、ぴのこは決心を固めた。
「がらどんどん、やっぱり、行こうと思う。」
電話越しの声は、驚くことにすぐに喜びに満ちた。
「ほんまに?よかった!待ってたで!」
その瞬間、ぴのこは初めて自分の選択に自信を持てた気がした。ずっと押し潰されていたような気持ちが、少しずつ軽くなっていくのを感じた。
実家を離れること、それはぴのこにとって、人生の大きな一歩だった。がらどんどんの家で新しい生活が始まることに対して、ぴのこは少し緊張していたが、それと同時に新たな希望が湧いてきた。
引越し、というよりも脱走の日、がらどんどんがぴのこを迎えに来てくれた。彼女はぴのこを見て、何度も「大丈夫、絶対大丈夫やから」と言った。その言葉に安心しながら、ぴのこはがらどんどんの家に入り込んだ。
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