第三章:出会い2
仕事の昼休みに、彼はいつも立ち寄る馴染みのラーメン屋を出たところで、「がらどんどん」と出会ったのだった。自分はこの店によく顔を出しているツイートをしていたし、ある日のオフ会で公開土下座した写真を見ていて風体を覚えられていたこと、そして気づかないうちに隣り合った席で感想ツイートを投稿していたこと。それらの偶然が重なっての特定だった。
「あ、あの、本当にぴのこさん?、私、がらどんどんです。お、お会いできて、光栄です。」
彼女は遠慮がちに声をかけてきた。店外の通りは大通りから一本入った道なので、軽く閑散としていた。
彼女は人よりも大きな身長をしていた、たぶん190cmはあっただろう。そして面が恐ろしく美人だった。そんな人が身を精一杯に小さくして顔を赤くしていたのだ。ネットでの様子との大きなギャップに、ぴのこはついうっかり吹き出してしまった。
「え、あの『がらどんどん』さん!?」
「ええ、はい、えろう、すんまへん」
そう答えた彼女は、柔らかい微笑みを浮かべていた。砕けて出てきた関西弁のイントネーションに、奇妙な安心感を覚えてしまった。
妙な縁もあるものだ。それぐらいのつもりで私用の連絡先を交換し、それからはオンライン上だけではない話をする機会があった。
がらどんどんは、朗らかな女性だったので、自分に自信のないぴのこのことを引っ張りながら、それでも決して嫌な気持ちにさせることなく話をすることができた。彼女の言葉はいつだってぴのこの心を軽くしてくれた。「仕事しんどいなあ」と零すと、「えらいな、ちゃんと頑張ってるやん」と肯定してくれた。実家では聞いたことのない優しい言葉だった。
それからのぴのこは毎週のようにがらどんどんを出会い、彼女と少しずつ親しくなっていった。
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