第16話 帰り道

 昼休みの後、最初の休み時間に俺と高平は早速木山に聞いてみた。


「木山、どうだったんだ?」


「うーん……ちょっと難しかったかな」


「そうなんだ」


「うん、なかなか本城さんとは話せないし、みんなの話題には付いていけないし……」


 いきなり他のグループに入ったらそうなるよな。


「まあ、でも、もうしばらく向こうで頑張ってみる」


「そうか、お前のことだからそのうち話せるようになるだろ」


「そう願いたいけどな……」


◇◇◇


 放課後になり、いつものように高平は部活に行き、俺と木山のところに小峯さんが来た。


「帰りは木山君も一緒なんだよね」


「そりゃあね」


「じゃあ、帰ろうか」


 そこにまた本城さんがやってきた。


「木山君、一緒に帰らない?」


「え!?」


「何驚いてるのよ。お昼も一緒だったし昨日も一緒だったでしょ」


「だけど、一緒に帰るって二人でか?」


「そうね。私、佳奈子と一緒だと喧嘩しちゃうし」


「そ、そうだな……」


 そこに小峯さんが前に出た。


「真凛、何考えてるの?」


「別に……」


「木山君を傷つけようとしてるのなら承知しないわよ」


「そんなこと思ってないし。佳奈子だって川端君と二人で帰りたいんじゃないの?」


「そんなことないから。真凛こそ、私への嫌がらせってだけでしょ」


「違うわよ。木山君と帰りたいだけだし」


 そこに木山が割り込んできた。


「小峯さん、いいよ。俺も本城さんと帰ってみたいし」


「木山君……」


「ふふ、木山君は私を選んだみたいね。残念ね、佳奈子」


 俺はそれを聞いていられず、小峯さんに言った。


「木山は大丈夫だよ。小峯さん行こう」


「俺のことは気にしないで。川端と楽しんでくれ」


 木山も言う。


「……わかった。じゃあ、また明日ね」


「おう!」


「さよなら~」


 本城さんは笑顔で手を振ってきたがこちらは振り返さなかった。


◇◇◇


「はぁ……」


 帰り道。小峯さんがため息をついた。


「どうしたの?」


「なんか、私のせいで川端君にも木山君にも迷惑掛けてるし……」


「迷惑じゃ無いよ。木山は本城さんと帰れて嬉しいだろうし、俺も小峯さんと二人で帰れるのは嬉しいよ」


「そうかもしれないけど……真凛は私への嫌がらせでやってるだけだから」


「それは木山も分かってるって」


「そうかな」


「うん。分かってて、本城さんと一緒に帰ってるんだから何か考えがあるんだろう。あいつもバカじゃ無い」


「そ、そうだよね」


「そうだよ。木山を信じよう」


「うん……」


「まあ、俺も小峯さんと二人っきりというのが嬉しいのは本音だし」


「私だってそうだけどね……」


「え?」


「あ、なんでもない……どこか寄る?」


「小峯さんが良ければ」


「何か甘い物食べたい」


 ということで俺たちはバスセンターの地下でワッフルを食べていた。


「それにしても本城さんの狙いは何なんだろう」


「狙いとか無いと思う。私への嫌がらせだけよ」


「嫌がらせねえ。木山が本城さんと帰ることがどう嫌がらせなの? 別に木山は小峯さんが好きなわけじゃ無いのに」


「自分が私より選ばれる存在であることをアピールしたいんだと思う」


「選ばれる存在?」


「そう。わかりやすくいうと可愛いってこと」


「可愛い? 本城さんは小峯さんよりも可愛いって言いたいんだ」


「うん。ほら、私が高校デビューしなくて喧嘩になったでしょ。だから、要するにおしゃれして自分のようになれ、って真凛は私に言いたいんだよ」


「なるほど……」


「そうしないと、可愛い子に友達みんな取られちゃうぞって言いたいんだと思う」


「へぇー、でもそれは無駄だよな。だって、俺が居るから。俺は小峯さんの方が可愛いと思ってるし」


「まあね。でもそれも……まあいいや」


「え? 俺が裏切るって思ってる?」


「……川端君は筋金入りの三つ編み眼鏡文学少女好きって思ってるよ」


「そうだよ。だから大丈夫だろ」


「だから信頼できないのよね」


「はあ?」


「だって、こういう子好きでしょ」


 小峯さんはスマホから写真を見せた。小峯さんと似た感じの三つ編みで眼鏡の少女。会ったことは無い子だ。


「確かに好きなタイプだよ」


「しかも、この子はほんとの文学好きだよ。すっごいたくさん本読んでたから」


「ほう、いいね」


「ほら、もう心動かされてるでしょ」


「ち、違うよ。それにしてもこれ誰? 妹とか?」


「妹か。確かに姉妹と間違われたこともあったからなあ……これは真凛だよ」


「え!?」


「中学時代の本城真凛。可愛いでしょ?」

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