第17話 昔の写真

 小峯さんが見せた写真は本城真凛の中学時代の写真だった。中学時代の本城さんは三つ編みに眼鏡。小峯さんとよく似ていた。俺はそれが本城さんだとは気がつくことは出来なかった。確かに俺の好きなタイプの格好だけど……


「だから真凛がその気になればいつでも川端君を私から奪えるの」


「そ、そんなこと……」


「無いって言える? 真凛があの格好して迫ってきたら。完璧に好きなタイプでしょ?」


「そうだけど……」


「だから私は川端君と付き合わないの。付き合ったら絶対真凛が迫ってきて川端君を取っていくから」


「俺は取られないし」


「そうは思えないけど。自分で認めたでしょ? 筋金入りの三つ編み眼鏡文学少女好きだって」


 小峯さんに信じてもらうために言った言葉があだになって、今では信じてもらえなくなっていた。


「まあ、でも俺と付き合ってくれない理由が分かって良かったよ」


「うん、そういうことだから」


「じゃあ、わかった。今度のデート、三つ編みも眼鏡もやめて来てよ」


「え?」


「それでも俺が小峯さんを好きだって証明する。それでいいでしょ?」


「本気なの?」


「俺はずっと本気なんだけどな」


「うーん……私、コンタクト無いから眼鏡はやめられないけど、髪はどうにでもできるか」


「それでもいいよ」


「よし、だったら家に来て。ほんとの私を見てよ」


「わかった。何なら今からでも……」


「今は無理。親が居ないときにしたい」


「そ、そっか……」


 って、そっちのほうが危険のような気が……


「今度の土曜の午後は親が居ないから。それでいい?」


「わかった」


「あ、妹は居るからね。二人きりじゃ無いから」


「そ、そっか……」


「あれ? もしかして二人きり期待してた? エッチなこととか?」


「ち、違うから」


「ニヒヒ。さすがに私もそこまでは緩くないよ」


「緩いとか思って無いし」


「ただ……一切、ごまかさないし。ほんとの私、見ても引かないでよ」


「分かってる。ほんとの小峯さんを見ても好きなままの自信があるから」


「言うねえ。ほんとの私、すごい自信ないから」


「そっか。楽しみだな」


「私は憂鬱だよ。せっかくの友人関係が終わったら寂しいなあ……せめて、せめて、友人のままではいておくれ!」


「嫌だよ」


「え!?」


「それ以上になりたいからね」


「……相変わらずグイグイ過ぎて、落とされそう」


 小声で言っていたが俺には聞こえていた。


「落ちたらいいのに」


「うぅ……もういじめないで」


 な、何か可愛い。


 帰り道、俺は小峯さんの手をつないでみた。小峯さんは拒否しなかった。

 俺はそのまま手をつないでいく。


 しばらく経ったときだった。


「え!?」


 小峯さんが慌てて手をふりほどく。


「ちょっと、いつから手つないでたのよ」


「いや、結構前からだけど」


「し、知らないわよ」


「いや、つないでたから。拒否しないからいいもんだとばっかり……ごめん」


「あ……いいんだけどね」


 そう言って、今度は小峯さんの方から手をつないできた。


「もう……これほとんどつきあってるじゃん」


「そうだよね」


「だから、ダメなんだって」


 そう言いながらも小峯さんは手は離さなかった。


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