第15話 誘い
翌日の朝、俺と高平と木山が話していると本城真凛が近づいてきた。まだ、小峯さんは来ていない。
「おはよう、高平君、木山君、川端君」
「ああ、おはよう」
「おはよう、本城さん!」
「おはよう……」
昨日のこともあったし俺の返事は小さいものだった。
「今日、お昼、私たちと一緒に食べない?」
本城さんが言う。私たちというのは、いつも本城さんが食べている女子何人かと男子何人かのグループだろう。
「俺は早紀と食べるから」
すぐに高平が言った。
「俺も――」
「はいはい、川端君は佳奈子だもんね。わかってるよ」
俺には聞いてないって事か。
「じゃあ、木山君は?」
「お、俺は……」
木山は迷っているようだ。しかし、木山は本城さんと仲良くなるチャンスを狙っていたはず。これはチャンスだと思うが……
「木山、行けよ」
高平が言う。
「そうだよ、俺たちのことは気にするな」
俺も背中を押した。
「そ、そうか。だったら、お邪魔させてもらおうかな」
「やった! じゃあ、お昼待ってるから」
「う、うん」
そこに小峯さんがやってきた。
「おはよう。ん、真凛?」
「あら、佳奈子。おはよう。今日のお昼、木山君は私たちと食べるって」
「へぇー」
「ごめんね、佳奈子」
「はあ? なんで謝ることあるわけ?」
「だって、あなたの
「木山君はそういうのじゃないから」
「あら、そう。じゃあ、私たちがもらっても大丈夫よね」
「木山君の意思次第じゃない?」
「うんうん、木山君が私たちを選んでくれて嬉しいわ。じゃあね」
本城さんは去って行った。
小峯さんが席に座ると木山が振り返って言った。
「なんかごめん。いいように利用されたみたいで」
「私は気にしてないから大丈夫。それよりチャンスだから頑張ってね」
「あ、ありがと。やっぱり、小峯さんは優しいじゃん。性格悪くないよ」
「ううん、私は真凛と同じぐらいには性格悪いから」
「……一応、俺、本城さん狙ってるんだけどね」
「あ、好きな人の悪口になっちゃったね、ごめん。でも、ほんと、気にしないで頑張ってね」
「おう、まあ頑張ってくる」
木山、大丈夫かな。
◇◇◇
というわけで昼休み。今日は4人で空き教室に来ていた。
「ふうん、そういうことで木山君はいないわけね」
事情を聞いた宮内さんが言った。
「にぎやかしがいないのはちょっと寂しいけど仕方ないか」
「あ、寂しいんだ。早紀ちゃん、優しい」
「まあ、でも、カップル2組の方がしっくりは来るし」
「それはそうだけどね」
カップル二組って……俺と小峯さん、高平と宮内さん、だろうけど、どちらも付き合ってないぞ。
「えっと……」
宮内さんが失言に気がついたのか言いにくそうにしている。
「ん? どうかした?」
「カップルじゃ無かったなって……」
「え? あー、そうか。私たち付き合ってなかったわ。アハハ」
小峯さんが笑った。
「え、何? 佳奈子はもう付き合ってるつもりになってたの?」
「いや、川端君のアピールがあんまりすごいからね」
「そんなにすごいか?」
「すごいすごい。思わず、もう付き合ってる感じになってるときあるもん」
「そ、そうなんだ……」
「でも、冷静に考えるとただの友達だし」
「ただの友達……」
「うん、勘違いしないようにしないと。あ、でも早紀ちゃんも自分たちのことカップルって言っちゃったってことでしょ?」
「わ、私は……幼馴染みカップルってことで」
「なにそれ。まさか付き合ってんの?」
「つ、つきあってない! 幼馴染みの男女ってだけよ」
「あー、そういう意味ね」
「うん。もう……佳奈子ちゃんってほんと最初の印象と違うよね」
「でしょ? 私、見かけ倒しだから。川端君は私の見た目が好きなだけなのよ」
「それだけじゃないし……」
俺は思わず言ってしまう。
「うん、川端君はそれ以上だと思うよ」
「早紀ちゃんまでそういうこというの」
「だってそう思うし。早く付き合っちゃいなよ」
「あー……そういうこと言うならこっちも言うけど?」
「ちょ、ちょっと……もう、ごめんって」
「うふふ」
ほんとこの二人仲良くなったな。
俺は少し話題を変えることにした。
「それにしても……木山、うまくやってるかな」
「あいつは口は達者だし大丈夫だろ」
「うん、そうだよ」
高平と宮内さんは楽観的だな。
「うーん、真凛のことだからなあ。ちょっと心配」
でも、小峯さんは暗い顔をした。
「そうなの?」
「うん。真凛ってそんなにコミュ力ある方じゃ無いから」
「そうなんだ。そうは見えないけど……」
「実はそうなのよ。だから急にグループ入ってきた木山君をサポートできないと思うし」
「そっかあ。じゃあ、木山が一人で頑張るしかないわけか」
「うん」
木山、心配だな。
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