第4話 生首
「うわあああああああ!」
俺は叫び、腰を抜かし、目を瞑った。
何で!? 何で!?
俺が君を殺したわけじゃ無いんだぞ!?
なのに何で俺の家に出てくるんだ!?
誰か助けて……!
そう思ったが、俺はこのマンションで1人暮らし。
誰も助けてなんてくれるはずもなく。
怖かったけど、勇気を出して目を開いた。
……目の前にあの子の首が来ていたらどうしよう……?
そう思ったけど、目を開くと。
あの子の生首は消えていた。
無論、カーペットに血の跡なんて残ってない。
さっきのは幻だったんだ。
そう思えてしまうくらい、痕跡を残さないで。
その日は、ウイスキーをしこたま飲んで、まだ明るかったけどベッドに引っ込んで寝てしまった。
かなり無理矢理に。
怖くてたまらなくて。
ずっとなるべく目を閉じて、ごろごろして。
食事も摂らず、風呂にも入らず次の朝まで。
そして朝になり、俺は怖かったけど。
買い置きの食パンを焼かずに食べ、目を瞑ってシャワーを浴びて。
鏡に向かって、歯を磨き髭を剃った。
……鏡にあの子の生首が映ったらどうしようか?
ビクついていた。
結局、映らなかったけど。
そして会社に行き。
身体を使う仕事を頑張っていたら。
……生首、幻覚だったんじゃ無いのか?
あのDVDが変なのは良く分からないけど。
いや……DVDが変なのも俺の気のせいだったんじゃ?
酒の飲み過ぎで、記憶が歪んだとかさ……
なんとなく、そう思えて来た。
仕事中は集中しなきゃいかんしな。
そっちに気が行って、何かそういう風に思えて来た。
そのままお昼休みになった。
仲間と一緒に食堂で、昼ご飯として今日の日替わり定食を食べていた。
「実はさ、こないだDVD屋に中古DVDを買いに行ったんだけどさ」
その食事中の話題で。
俺が体験したことをぼかして話そうと思った。
違法っぽいDVDがあったんだよね、って。
仲間から面白い話が訊けるかもしれんしな。
そういう悪質メーカーがあるんだよ。オマエ騙されんなよ、みたいな。
「そこで」
法に触れてそうなDVDを……って言おうと思ったんだ。
そこで俺の言葉が止まった。
凍り付いたんだ。
……食堂厨房横の通路の床に、居たんだよ。
少女の生首が。
彼女は恨めしそうに俺を見つめていた。
「ぎゃああああああああ!」
俺は叫んでいた。
椅子から転げ落ちる。
「どうした江口!?」
仲間が俺に駆け寄る。
俺は
「首がッ! 首がッ!」
俺が恐怖で目を閉じて、厨房横の通路を指差すと
「首……?」
仲間たちがそっちを見てくれて。
「……何?」
困惑の声。
えっ?
俺の方も困惑し、目を開ける。
そして怯えながら厨房横通路に目を向けると……
また、少女の生首が消えていたんだ。
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