第3話 これ、何?

 さぁ、どんなすごいプレイをするんだろうか?


 ここから緊縛セクロスで、快楽堕ちかな?

 レイプものならリアルに寄せるのはやめてくれよ?


 リアル寄りは映像で見ると萎えるんだよ。

 折角の女子中学生の性行為なんだから、ここはフィクション丸出しの快楽堕ち展開で……!


 食い入るようにテレビ画面を見つめ続ける俺。


『そこのあなた! オジサン! お願い助けて!』


 もう、そんな前振りは良いんだよ!

 そろそろその可愛い顔が快感に引き歪む様子をさ……!


 そんな俺のギラギラした欲望は


 画面外から突然やってきた男に少女がその長い髪を掴まれて、ベッドに押し付けられ。


 自分を押さえる男が手にした鉈で、その両手を肘で切断されたところで消え失せた。


『あぎゃあああああああ!!』


 ……少女は、目と顎を裂けんばかり開き、大声で悲鳴をあげる。

 そこには品もなければ、快楽要素もどこにもない。


 本当の悲鳴。

 演技じゃない。


 噴き出す血液。


 あまりのことに、固まる。


 そのまま少女は、足を切断され、腹を裂かれ、内臓を引きずり出されていた。


 少女は吐血し、意識を失うけど、激痛ですぐに覚醒して悲鳴を再開する。


 ……地獄絵図。


 眼から光が消え、ただ叫ぶだけの生き物になる少女。


 そして


 最後、鉈を持った男は少女の首を刎ねた。


 ドン、と鉈の一撃で綺麗に首が落ち、吹っ飛ぶ。


 カメラはその首を追跡し。


 コロコロと転がり、赤い絨毯の上に横倒しの状態で止まった。


 カメラが寄る。


 少女の涙で濡れ、絶望と苦痛で歪んだ表情が大写しになる。


 ……これ、何?

 そこでようやく、俺の中にDVD再生を止めようという意識が生まれ、リモコンで停止を押そうと手を伸ばす。


 そのときだ。


『よくも私を見捨てたな!』


 画面の中の少女の顔に生気が戻り、怒りの形相で叫んだんだ。


 俺は心臓を掴まれるような恐怖を覚えた。

 真剣な憎悪……


 わけが分からない。

 どうしよう……?


 そして俺が混乱を深め、また動けなくなっている間に。


 DVDの内容が終了したのか、画面が地上波の放送に戻った。


 ……何だったんだ? 一体……?


 わけが分からない。

 裏社会モノで、本物の殺人の様子を記録したスナッフムービーっていうビデオ作品があるという話は見たことがあるけど。


 これは、そうだったのか?

 でも、それならあの中古DVDショップに置いてあった理由が流石に分からない。


 そして作品としての内容も……


 どうしてエロ系を装う必要があるんだ……?


 本当にわけがわからなかった。


 ……勇気が要ったけど、俺はもう一度DVDの内容を見返すことにした。

 そこに何かヒントがあるかもしれないし。


 で、問題の個所を見ようとしたら……


 ……成人した女優さんが、セーラー服を着て、ガクラン姿の成人男性とベッドで夜のプロレスをしている映像しか見れなかったんだ。


 中学生っぽい美少女が、鉈で生きたまま解体される様子は入って無かった。


 えっ……?


 ゾッとした。


 これ、ひょっとして……


 呪いのビデオって奴か?


 ……どうしよう?

 ちょっと待ってくれ……


 俺は怖くて。

 ビールでは酒が、酔いが足りなくなった。

 もっと強い酒が欲しい。


 俺は缶ビールをローテーブルに置き、グラスとウイスキーを取りに行く。

 そして食器棚からウイスキーグラスを取り出したとき。


 俺はそれを床に落した。


 ウイスキーの瓶が置いてある棚の横に、居たからだ。


 生首が。


 さっき、鉈男に生きたままバラバラにされた、少女の生首が。


 ……彼女は、カーペットの上に床屋のマネキンのような感じで鎮座して。

 恨めしそうに俺を見つめていた。

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