やってきたのは

 僕の周りを歩いて通る人々を日が傾くまで見ていると、向こう側から人が駆けてくるのが見えた。

 よく見ると、ダウンジャケットとデニム姿の鈴川透だった。

 息せき切らしながら、僕の目の前までやってきた透は、少し嬉しそうな表情をしていた。

「ここにいたのか! よかった、見つかって。お前体がないんだろう? 動けるか?」

 何だよ、お前のせいで僕はこうなったっていうのに。

「動けない。透のせいだ」

「ごめん。俺は自分の体に戻ることだけ考えてた」

「おかげで僕は幽霊だ」

 僕は不満を吐き捨てるように言った。

「魂はあるようだな。それに、俺にはお前の声がリアルに聞こえる。何かに乗り移ることは出来そうか?」

「分からない」

「雅也のグッズを持ってくるから、乗り移れるか試してみよう」

「僕のグッズを持っているのか?」

「いや、あてがあるだけだ。待ってろ」

 そう言うと透は、逆方向に走り出した。

 あいつ、幽霊の僕を探し出しただけでなくて、グッズまで持ってくると言って、走っていった。悪い奴ではないのかも……。

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