第3話 アレスVSオーキッド②-リストバンドからの刺客-

「俺のターンだ! ダイスを振る」


 アレスの目の前にダイスが転がる。その目は1を示していた。


「1か。まあ、この状況じゃ悪くないかもな」


 ダイスを振った時の処理として、2~6はその枚数分デッキの上からカードをめくり、好きなカードを1枚手札に加えて残りはスモークゾーンへと送る。


 だが、1だけは例外としてデッキからカードを引く代わりにスモークゾーンのカードを1枚手札に加えることができる。


 スモークゾーンに落ちてしまったカードもこうやって回収することができるのである。


「俺はたった今回収した赤サソリを召喚する。いけ! パワー10000の俺の最強モンスター!」


赤サソリ/カテゴリー:節足動物、毒性/種族:怪虫種/性別:女性

レベル:4(コスト:2)/パワー:10000

効果1(分類:起動/発動場所:手札/発動コスト:2):このカードを手札から墓地に捨てることで発動。デッキからカードを2枚ドローする。

効果2(分類:任意誘発/発動場所:墓地/発動コスト:0):このカードが戦闘で破壊された時、戦闘相手のパワーを6000下げる。


 赤サソリのコストを2支払い、現在のアレスのスモークゾーンのカードは6枚。まだまだモンスターの召喚に余力を残している。


「このまま霧深き森のパワー20000の壁を崩してやるぜ! 見にくい白鳥を召喚する!」


見にくい白鳥/カテゴリー:童話生物/種族:幻獣種/性別:女性

レベル:4(コスト:2)/パワー:6000

効果1(分類:永続/発動場所:フィールド/適用コスト:なし):このカードは自分フィールドに他にモンスターがいる時、相手に攻撃されない。

効果2(分類:起動/発動場所:フィールド/適用コスト:なし):1ターンに1度だけ発動できる。自分フィールド上のモンスターを1体、手札に戻す。


「まだまだ。翼竜の卵を召喚!」


翼竜の卵/カテゴリー:卵/種族:ドラゴン種/性別:無性

レベル:2(コスト:1)/パワー:8000

※このカードは効果を持たない


「そして、これで止めだ! 団結する弱小市民を召喚!」


団結する弱小市民/カテゴリー:市民/種族:人間種/性別:男性

レベル:2(コスト:1)/パワー:6000

効果1(分類:永続/発動場所:フィールド/適用コスト:なし):このカードがレベル2以下のモンスターを援護する時、パワーは半減されない。


「な、なに! そのカードは……!」


「悪いな。オーキッド。このカード。今朝生成できたばかりのカードなんだ。その詳細を知らないだろ?」


 見たことがないカードにオーキッドは震えた。団結する弱小市民。


 その効果を見てオーキッドは察した。このカードはパワー以上に強いカードであると。


 アレスは一気に4体のモンスターを展開した。そのコストの総計は6。この大量展開で霧深き森を突破するつもりであった。


「行くぞ! 翼竜の卵で霧深き森にアタック! そして、団結する弱小市民が援護。更に見にくい白鳥と赤サソリも援護に加わる!」


 翼竜の卵(パワー8000)にパワー6000とパワー6000とパワー10000のカードが援護をする。援護するカードのパワーは半減するから、本来ならパワーの合計は19000と霧深き森のパワーを上回ることができない。


 しかし、団結する弱小市民の効果により、そのパワー6000が半減されずに済む。これにより、8000+6000+(6000+10000)/2となり、そのパワーの合計は22000である。


 霧深き森の防衛時のパワー20000を上回る驚異的なパワーであった。


「食らえ! 俺たちの団結の力だ! 霧深き森を撃破!」


「ぐっ……!」


 お互いのパワーの差は2000。よって、オーキッドは2ポイントのダメージを受ける。


「よっしゃあ! ついに霧深き森のコンボを打ち破ったぞ! 見たか!」


 アレスは飛び跳ねた後にガッツポーズをした。喜びのたうち回っているアレスとは反対にオーキッドは冷や汗をかいていた。


「2ポイントのダメージを受けたけど、霧深き森が破壊されたことで、そのレベル分だけスモークゾーンにカードを溜める!」


 オーキッドは焦っていた。今までアレスに破られたことがなかった霧深き森とハンターカテゴリーのモンスターとのコンボ。


 それが破られてしまい今後の展開をどうしようかと悩みに悩んでいた。


 オーキッドはかなり辛い状況に立たされているが、それはアレスも同じことだった。


 霧深き森を突破するためにリソースをかなり使ってしまった。4体のモンスターの一斉攻撃でようやく突破できた。


 アレスはもうこのターン中の攻撃ができない。たった1体のモンスターを倒すために総力を尽くしてしまったのだ。


「俺はこれでターンエンドだ」


 ターン終了宣言をせざるを得ない。攻める時は強力な布陣であったアレス側の防衛ラインは少々心もとないものがあった。


オーキッド:手札:3 スモーク:5 墓地:1 トラッシュ:5 デッキ:44 ダメージ:2

フィールド:深緑の狩人、肉食ワーム


アレス:手札:2 スモーク:2 墓地:0 トラッシュ:9 デッキ:43 ダメージ:1

フィールド:赤サソリ、見にくい白鳥、翼竜の卵、団結する小市民


「僕のターン。ダイスを振る」


 オーキッドのダイスの目は6。それを見た瞬間オーキッドはほくそ笑んだ。


「よ、よし! この状況で6はツイている!」


「マ、マジか……」


 オーキッドとは対照的にアレスは冷や冷やとしてしまう。ダイスの6はかなり強い。


 スモークゾーンに一気にカードを5枚溜めることができる。


 このゲームはスモークゾーンにカードがなければ何もすることができない。


 逆に言えばスモークゾーンにカードがある限り強力なカードを展開することができる。


「アレス。強くなっているのは君だけじゃないってことを教えてやる。今朝引いた僕の当たりカードを見せてあげる!」


 オーキッドは手札からカードを1枚墓地に置いた。


異次元からの刺客/カテゴリー:ディメンション/種族:魔族/性別:男性

レベル:2(コスト:1)/パワー:3000

効果1(分類:起動/発動場所:手札/適用コスト:2):このカードを手札から捨てて発動する。自分の着用しているリストバンドからカードを1枚ランダムに手札に加えることができる。「異次元からの刺客」の効果1の効果は1ターンに1度だけ使用できる。


「異次元からの刺客の効果を発動。このカードを手札から捨てて、更にコストを2支払うことでリストバンドのカードを1枚ランダムに手札に加えることができる」


「リストバンドからのドローだと……!」


 リストバンド。それはデッキではない別のゾーンである。


 デッキのカードはいつスモークゾーンに落ちるかわからないリスクを抱えている。しかし、リストバンドは正に盤外のカードである。


 番外ゆえに敵の攻撃や効果の範囲の外にある。デッキ・フィールド・墓地・手札。そのいずれも干渉されるリスクはあるが、リストバンドはそのリスクがない。


 盤外戦術。故に無敵のゾーン。リストバンドを着用するのは認められた権利であり、そこに7枚までカードを仕込むのは認められている。


 このリストバンドに仕込まれた7枚。通称7セブンカードが勝敗をわけることもある。


「リストバンドから手札に加わったカードはエルフの狩人。それをそのまま召喚する!」


エルフの狩人/カテゴリー:ハンター/種族:エルフ種/性別:男性

レベル:4(コスト:2)/パワー:13000

※このカードは効果を持たない


「よし。一斉攻撃だ! まずは深緑の狩人(パワー8000)で見にくい白鳥(パワー6000)にアタックする! 深緑の狩人の効果で幻獣種と戦闘する間だけパワーを2倍にして計算をするよ!」


 両者のパワー差は10000。アレスの見にくい白鳥が破壊されて、アレスに10ポイントのダメージが入る。そして、白鳥のレベル分の4枚デッキの上からスモークゾーンに送られる。


「ぐっ……」


「まだまだ。次は肉食ワーム(パワー9000)で団結する小市民(パワー6000)を攻撃する」


 またしてもアレスに3ダメージが入り、団結する小市民のレベル2分デッキが削れる。


「そして、エルフの狩人(パワー13000)で翼竜の卵(パワー8000)に攻撃する」


 パワー差5000。つまり、アレスに5ポイントの大ダメージが入ってしまう。更にアレスのデッキは2枚削られる。


「ぐはっ……!」


 アレスはこのターンで合計18ポイントのダメージを受けてしまった。


 形成は一気にアレスに不利になった。しかし、アレスにも希望は残されている。


 このゲームにおいて、モンスターが破壊されてスモークゾーンにカードが溜まることはチャンスなのである。


 ピンチになればなるほどチャンスが生まれる。それがこのエンゲージなのである。


「僕はこれでターンエンドだ。さあ、アレス。かかってこい!」


「ああ……言われなくても……!」


オーキッド:手札:3 スモーク:6 墓地:2  トラッシュ:9 デッキ:38 ダメージ:2

フィールド:深緑の狩人、肉食ワーム、エルフの狩人


アレス:手札:2 スモーク:10 墓地:3 トラッシュ:9 デッキ:35 ダメージ:19

フィールド:赤サソリ

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