サンタは、いい仕事をする!

崔 梨遙(再)

1話完結:1400字

 クリスマス・イブ、の前夜、僕、崔梨遙は久しぶりにベッドに靴下をセットして寝てみることにした。子供の頃はよくやった。サンタさんがプレゼントを入れてくれるというのだ。僕は靴下に、“レ〇ナさんが欲しい”と書いたメモを入れておいた。


 目が覚めた。クリスマス・イブだ。僕は半身を起こした。そしてビビった。目の前に小柄な女性が倒れているのだ。倒れているのか? いや、眠っているのか? ベッドから下りるとメッセージカードが置いてあった。


『大当たり! 今年も抽選で全世界の、靴下を吊した人間の中から24名の方にプレゼントを贈りす。あなたは今年、抽選で選ばれました。メリー・クリスマス! by サンタ』


 Oh! サンタさん、いい仕事をするぜ! 確かに、目の前に倒れているのレ〇ナさんだ。その時、レ〇ナさんが目を覚ました。


「おはようございます」

「……おはようございます。え! え! あなた誰ですか? ここはどこですか?」

「あなたは、レ〇ナさんですか?」

「はい、レ〇ナです。それよりあなたは?」

「崔梨遙(さい りよう)です。あなたの大ファンです」

「ファン? え! ここはどこですか?」

「大阪の僕のマンションの部屋です」

「誘拐ですか? 犯罪ですよ! 警察を呼びます! あ、携帯が無い。携帯、どこにあるんですか?」

「いや、僕は知らないんやけど」

「待て、待てい!」


 そこに赤い衣装の赤ら顔の大男が出現した。


「うわ! あんた誰や?」

「更に変な人が出て来た!」

「儂はサンタじゃ」

「「サンタさん?」」

「レ〇ナさん、あなたは、この男に贈るプレゼントなのじゃ」

「私が、プレゼント?」

「そうじゃ、あなたは今日、この男へのプレゼントだから、この男に想い出を与えないといけないのじゃ」

「困ります! 私、クリスマス・ライブがあるんです」

「大丈夫じゃ、そちらにはレ〇ナの偽物を送り込んでいる。安心しろ。このプレゼントは今夜の0時までじゃ」

「え! 見知らぬ人と0時まで過ごすんですか?」

「この男なら大丈夫じゃ。あなたに危害は加えない」

「クリスマス・ライブの方は大丈夫なんですね?」

「うむ、安心しろ」

「わかりました。断れないみたいなので、おとなしくプレゼントになります」

「すまんな、では、よろしく頼む」


 サンタは姿を消した。


「とりあえず、コーヒーを淹れますね」

「あ、はい、お願いします」


「あ、美味しい」

「僕のオリジナルブレンドです」

「これから、何をするんですか?」

「レ〇ナさんは、何がしたいですか?」

「そうですね、せっかくですから大阪見物がしたいです」

「大阪のどこに行きたいですか?」

「お任せします」

「じゃあ、行きましょう」


 通〇閣に行き、お好み焼きを食べ、有名な○○堀を巡り、串カツを食べた。そして、“最後はちょっと、ゆっくりしよう”ということになり、崔のマンションに戻ってまたコーヒーを飲む。


「一応、これが僕の電話番号です。気が向いたら、電話ください」


 僕は勇気を出して、メモを渡した。


「あ、どうも」

「今日はありがとうございました」

「崔さんって、紳士なんですね」

「そうでもないですよ」

「一緒にいて、楽しかったです」

「それは良かった」

「あ、針が重なりますね」

「お別れですね」

「あ……身体が……」


 レ〇ナの身体は光の粒となって消えていった。



“もう1度、会いたいなぁ……無理だろうなぁ……でも……もしかしたら……”



 プルルルルル……プルルルルル……。




 崔梨遙、12月26日死亡。死因、脳卒中。享年46歳。







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サンタは、いい仕事をする! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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