私と無口なパートナー

天羽

第1話 春

春は大好きな上級生のお姉さんが中学校に行ってしまうから嫌い。


花粉が飛ぶから、嫌い。


新学期、友達できないから嫌い。


でも、今日キミと出会って今日春を好きになった。


「のぶおじちゃん、この子かわいい」


パパの弟の、のぶおじちゃんが飼っているわんちゃんが赤ちゃんを産んだのでパパと見に来ていた時に、その子を見つけた。


一匹だけ悲しそうな顔をして、ほかの赤ちゃんたちとは距離を置いている子。


「ねえ、この子だけ離れてるね」


私がのぶおじちゃんにそう言うと、


「人見知りならぬ犬見知りなんじゃないか?」


のぶおじちゃんにそう言われて


そうか、この子は私と同じなんだ、そう思った。


「...この子、連れて帰る。」


私が言うとのぶおじちゃんは


「まなみ、いくらまなみでもそんなに簡単に命を引き渡すことはできないよ。兄さんに聞いておいで。」


そう言われたので、パパの元へその子を抱えて走っていき、


「パパ、一生のお願いがあってね、この子ね、

ひとりぼっちで寂しがりやなの。私と似てるから、家族になってあげたいの。」


「まなみ、家族になったらご飯を朝早くに起きて食べさせてあげないといけないよ?病気になったら病院に連れて行くんだよ?」


「まなみちゃんと育てるよ!パパとママに迷惑かけないから!」


「でも体調悪そうだな、って思ったらまなみはまだ7歳だから、パパとママに頼らないといけないんだよ、命を育てるっていうことはね、家族に迷惑をかけないといけない時もあるくらい重いんだよ。」


「うん。頑張るから!」


パパは呆れていたけど、のぶおじちゃんも他のお家の家族にしようとしていたみたいで、その日のうちに一緒に帰れたんだ。


その白い毛に茶色の模様がついた垂れ耳の子犬。


「キミは今日からハルカって名前だぞ!」


「なんでハルカなんて女の子みたいな名前なの?」


運転中前を向いたままのパパが私にそう聞く。


私は待ってましたと言わんばかりに、


「私が春を好きになった日だから!」


そう言って私達はパートナーになった。

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私と無口なパートナー 天羽 @axx189

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