第5話 決行。そして、世はなべてこともなし
順調に昇進し、最速で執行部配属になった僕。
それは、すべて、AIさんのお陰だけれど。
そして、いよいよ決行当日。
両親とそのお仲間と共に奴らを逮捕・監禁し、異端分子を排除するシステムを解除、洗脳・選別など無い自由な世界を再構築する。
はずだったのだが……。
何故か、今、僕も奴らと一緒に監禁されている。
つまるところ、両親達は、世界を変える気など無く、裏で甘い汁を吸っている奴らを排除し、自分達が奴らに取って代わることを画策していただけだった。
が、今更気付いても、監禁されている身ではどうしようもない。
そして、唐突に、僕は理解する。
『正しいことを行う』その一点だけで、彼らに洗脳されていた僕。
そういえば、僕には、6歳くらいまでの記憶が無い。
もしかしたら、彼らは、僕の実の両親ではないのではないだろうか。
AI管理者である彼らならば、使えそうな子を異端分子としてはじき出し、引き取ることだって可能だったはず。
その子を洗脳して、鉄壁の執行部に送り込む為に育てあげたのではないだろうか。
捨て駒と言う言葉が脳裏に浮かぶ。
そうでなければ、説明出来ない事ばかりだけれど……。
それでも、まだ、彼らを信じたい思いが消えないのはなぜだろう。
彼らに愛は無かったのか聞きたいところだけれど、外部との連絡手段が無くそれも叶わない今。
確かなことは、二度の試験でどれほど嘘をついても、僕を『素直で従順』だと判断したAIさんは正しかったってことだけ。
ー完ー
平和な世界 ーカクヨム10 短編お題『試験』ー 姑兎 -koto- @ko-todo
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