第3話 それから

それからもずっと、僕は、嘘の僕で生きてきた。

そこそこの成績を残し、一般的な受け答えをし、僕じゃない誰かを演じ続けてきた。


AI管理者という肩書を持つ、父、田中悟、母、田中真優。

世間で『AIさん』と呼ばれる統治者と一番近くにいるはずの二人もまた、別の誰かを生きていることを僕は知っている。


一見、差別も格差も無い世界。

それは、時間をかけて徐々に洗脳されてきた世界。

統治者に近いからこそ気付いた真実と疑問に立ち向かおうとしている両親もまた『正しいことを行う』為に嘘をついて生きている。

それは、密かに僕にも受け継がれ、静かに時を待っている。



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