第3話「黒猫のいる喫茶店」



重たい扉が軋む音を立てて開いた。


「まるで、時が止まっていたみたいな場所...」


埃っぽい空気が漂う店内に、月明かりが差し込んでいく。天井まで届きそうな大きな窓、整然と並ぶ丸テーブル、そしてカウンターの奥には立派なコーヒーサーバー。ここは間違いなく、誰かが大切にしていた喫茶店なんだろう。


「なんだか、懐かしい香りがする。私の店にも、こんな雰囲気があったらよかったのに」


カウンターに手を触れると、厚く積もった埃の下から、深い色の木目が顔を覗かせた。


黒猫が軽やかに店内に入ってきて、窓辺に飛び乗る。その瞬間、不思議なことが起きた。


「え...これは」


尻尾の炎が、まるで合図のように明るく燃え上がる。するとどこからともなく、温かな光が店内を包み込んでいく。埃が魔法のように消え、くすんでいた家具が輝きを取り戻していく。まるで、店全体が目覚めていくよう。


「一体、何が起きているの?それに、あなたは...」


「ようやく言葉を交わせるわね」黒猫がクスリと笑う。「私の名前はヒノメ。このカフェの、まあ...管理人のようなものよ」


人の言葉を話す黒猫。でも、それ以上に驚いたのは、その声に感じる不思議な懐かしさ。まるで、昔からの知り合いのよう。


「碧野美咲です。えっと...ここは、異世界なんでしょうか?」


「そうね。でも、あなたにとっては、むしろこちらが本来いるべき場所かもしれない」ヒノメは尻尾の炎をゆらめかせながら続けた。「このカフェには、特別な力があるの。魔法動物たちの魔力を癒やし、高める力。そして、その力を引き出せるのは...」


その時、不意にドアの呼び鈴が鳴った。


「お客様...?こんな夜遅くに?」


私が振り返ると、そこには小さな白いウサギが立っていた。その背中には、ガラスのような透明な羽が生えている。


「あら、もう来てしまったのね」ヒノメが少し意外そうな声を上げる。「予定より早かったわ。でも、まあいいでしょう」


白ウサギは丁寧にお辞儀をすると、真剣な表情で私を見上げた。


「お噂はすでに伺っております。私たち魔法動物の魔力が日に日に弱まっていく中、希望の光となる方が現れると」


「え?私が...?」


戸惑う私に、ヒノメが静かに告げる。「そうよ。あなたには、このカフェで私たちを助けてほしいの。前世での経験を活かして」


窓から差し込む二つの月の光が、静かに店内を照らしている。まるで、この瞬間を見守っているかのように。

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2024年12月16日 21:00
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『ふしぎ魔法のどうぶつカフェ』~まほうのドリンクをどうぞ~ ソコニ @mi33x

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