第5話 平衡感覚グリーンの癒し
険しい山道を越え、ようやく平原に出た8人だったが、その空気はどこか重苦しかった。連戦の疲れと、まだ息が合わないチームワークが原因だ。
「タケル、また突っ走るんじゃないだろうな?」とアオイが苦々しい表情で言うと、タケルは口を尖らせた。「俺だって反省してんだよ!けど、指示ばっか出すお前もウザいんだよな。」
「ウザいだと?少なくとも俺は考えて動いてる。お前はただの熱血バカだろうが!」
「なんだと――!」
ピリピリとした空気が一気に高まり、他のメンバーは言葉を失う。見かねた触覚のサラが間に入ろうとするが、アオイとタケルの剣幕に押されてしまう。
「やめて、二人とも!」と聴覚のミカが声を張るが、全体の空気を変えるには至らなかった。
その時、静かに歩み寄ったのは平衡感覚を司るリナだった。彼女は控えめであまり自己主張をしないタイプだが、持ち前の冷静さと落ち着きで周囲を見渡していた。
「ちょっと待って、二人とも。疲れているときにぶつかり合っても、いい結果は出ないわ。」
「でも――!」タケルが食い下がるが、リナの静かな声がそれを遮る。「それぞれに言い分があるのはわかる。でも、今私たちが戦うべき相手は誰なの?」
その言葉にアオイとタケルは一瞬沈黙した。リナはさらに続ける。「私たちは8人で1つのチーム。それぞれが持つ力を合わせないと、敵には勝てない。お互いを攻撃するんじゃなくて、助け合うべきじゃない?」
リナの言葉は、二人の心の奥に響いた。彼女の落ち着きと説得力は、まるで揺れる天秤を静かに均衡させるかのようだった。
その後、リナは一人ひとりに声をかけ、疲れた心を癒していった。彼女の平衡感覚の力は、心身のバランスを整えることに優れており、自然と全員の緊張がほぐれていく。
「ごめん、俺、少しカッとなりすぎた。」とタケルがぽつりと呟く。「俺もだ。悪かったな。」とアオイも頭を下げる。
他のメンバーもリナに感謝の意を伝え、初めて8人の心が一つにまとまる感覚を得た。
その瞬間、リナの体が淡い緑の光に包まれた。平衡感覚を司る彼女の力が完全に覚醒し、チームの調和を保つ力がさらに強まったのだ。
「これが……私の力。」リナは驚きつつも、微笑みを浮かべた。「皆が一緒にいる限り、私はもっと強くなれる気がする。」
こうして、リナの癒しの力によって8人は一つのチームとしての第一歩を踏み出した。
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